1R1分34秒

本書は言うまでも無くボクシングを題材にしている。タイトルにしても挿画にしても、どう見てもボクシングであることがよくわかる。しかしタイトルのところでもしKOとなると、あっけないというイメージを持たれるのか、それともKOを奪った選手の強さを際立たせるか、と言ったところである。

事実、有名な話になっているのだが、本書が出たのは昨年の1月。出る前年の10月に井上尚弥とファン・カルロス・パヤノがWBSSの初戦で戦い、井上がパヤノを相手にわずか1R分10秒という電光石火でKOを奪ったという衝撃的なものがあった。本書のタイトルをふと見ると、途端にそのことを思い出す。

長くなったが本書の話に移る。本書はとあるボクサーがデビュー戦は勝利したものの、あとは敗北と引き分けを行き来している中で、自分はなぜボクシングをやっているのか、と言うことに向き合う一冊である。ボクサーならではの心情はもちろんのこと、ボクサーの中で練習以上に過酷なウェイト(体重)管理などの苦しみ、そしてわずか1Rで勝利することを目指して組み立てていくことのむなしさが文字越しながら、ありありと伝わってくる。

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