ヘディングはおもに頭で

大学受験という重要な試合に敗北し、浪人という再試合を待ちながらアルバイトを転々としながら、フットサルに思いを馳せる青年の物語である。主に東京の北千住や永田町など東京23区近辺を舞台に描いている。しかしフットサルに目覚めたのはちょうど大学受験に失敗したときであり、完全な初心者の状態から始まった。その初心者の中でドリブルやヘディングと言った技術をフットサルの試合を通して、磨いていく一方で、読書会にも参加するなど、高校とは異なった「青春」を謳歌していった。

本書はある種短編集のようなものなのだが、短編の中で受験失敗という空虚な感じから、だんだんと明るくなっていき、そして一度失敗したものに再チャレンジするまでのプロセスが何とも言えないものだった。さらに言うと「忘れ物を取りに行った」と言うようなものではなく「忘れていたものを放っておいたら偶然見つかった」と言うような感覚の一冊であった。