「愛」と言う言葉を好いている人もいれば、本書の登場人物に出てくる人のように嫌いな人もいる。それは人それぞれと言った方が良いのかもしれない。
本書は愛を憎むと言うよりも、軽んじた「愛」を嫌い、自分自身の日常を取り戻すと言った物語である。その中には大人になれていない人々がおり、自分自身を見つけ、つくっていくためにもがき苦しんでいる姿がここにあった。
また本書はあと2編あり、「しずけさ」と「生きるからだ」がある。「しずけさ」は「嵐の前の静けさ」を連想するのだが、むしろ夜の「しずけさ」を乗り越えていくために奮闘する少年の物語、「生きるからだ」は「東京」という人の多い街で、溶け合って生きる姿を描いている。いずれも青少年という難しい世代の中で心が揺れ動き、成長している姿が映し出されている。ただそれを美しく見えるかどうかは観ている人次第と言うほかない。
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