バブル経済事件の深層

平成に入った直後にはバブル景気の絶頂期だったのだが、やがて崩壊し、失われた10年ないし20年と呼ばれる時代に入った(本書では30年と主著している)。バブルの負債を返済するような時代の中で、経済的な事件も次々と起こった。その中でも主要な事件はいくつもあるのだが、本書ではその中でも銀行の破綻などを主軸にした出来事の裏を取り上げている。

第一章「尾上縫と日本興業銀行―産業金融の雄はなぜ大阪の女将に入れ込んだのか」

尾上縫(おのうえぬい)はバブル絶頂期には「北浜の相場師」と呼ばれるほどの金融界の風雲児でもある一方で大阪・千日前の料亭の女将でもあった。バブル絶頂期の活躍の印象はかなりのもので「女帝」といった異名も持つようにもなり、小説のモデルにまでなった。

しかしその尾上は1987年頃から日本興業銀行に対して巨額詐欺事件を起こした。その事件は特にバブル崩壊機、神通力を失い、「億」どころか、「兆」にまで及ぶほどの巨額の負債を背負うこととなった。その返済のために次々と詐欺に手を染めることとなったが、その全容を取り上げている。

第二章「高橋治則VS特捜検察、日本長期信用銀行ー公的資金による金融破綻処理第1号に選ばれた男の逆襲」

戦後間もない頃に誕生し、高度経済成長やバブル経済の下支えの役割を担っていた。しかしバブル崩壊とともに、急速な経営悪化に伴い、公的資金注入を受けることとなった。にもかかわらず、今度は粉飾決算に手を染めるようになり、特捜検察との戦いもあったという。

第三章「大和銀行ニューヨーク支店事件―「大蔵省護送船団」統治システムの失墜」

1995年、アメリカを舞台とした日本の銀行の事件として「大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件」がある。正確には「発覚」したのが1995年であり、その12年前にあたる1983年から始まったのだという。その事件の一部始終を取り上げている。

第四章「大蔵省と日本債券信用銀行の合作に検察の矛先―国策の変遷で逮捕された大蔵官僚・窪田弘の悲劇」

大蔵官僚で活躍し、国税庁長官にまで歴任し、日本債券信用銀行の頭取、会長に就任したのだが、その時にはバブル崩壊の煽りを受けて、巨額の不良債権が生まれ、経営破綻を来した。その時には会社ぐるみでの粉飾決算を行い、大きな事件へと発展することとなった。銀行はやがて「あおぞら銀行」になって現在に至る。

バブル経済から崩壊するまでの間、そして崩壊し、失われた時代の中で生まれた経済事件は数多くある。その中でも特に本書は銀行、そして失われた時代に入ったときに起こった、もしくは明るみに出た事件にフォーカスを当てている。そもそも本書で取り上げた事件があった時代は銀行や証券の破綻が相次いだことも一因とも言える。