平成の時代は金融関係に大きな変化をもたらしたとされている。しかしその「変化」は経済そのものの変化に直結しているところがあり、その直結が「破綻」といった言葉が出てきた時期もあった。
その約30年にも及ぶ平成における金融の歴史について、出来事とともに取り上げている野が本書である。
第1章「危機のとばくち―バブル崩壊と大いなる先送り」
昭和末期に入ってから「バブル経済」と呼ばれるほど、危機は上向いていた。特に土地や株に手を出す人たちもかなり多かったとも言う。しかし平成に入って、バブルは崩壊し、経済面でも「失われた時代」とも呼ばれるほどの低成長時代に入っていった。その時代の中で、銀行などにおける「不正事件」も次々と起こり、その事件処理の対応に追われたこと(これは以前取り上げた「バブル経済事件の深層」にも言及している)、他にも政府における金融をはじめとした策の先送りもあり、傷跡はドンドンと大きくなっていった。
第2章「金融危機、襲来―拓銀・山一、連鎖破綻の衝撃」
その傷跡がやがて「金融危機」としてやって来た。1997年11月に三洋証券が会社更生法の手続きを開始したことにより、銀行の市場は混乱を来した。その理由は金融関係で会社更生法の手続きを行ったのは、戦後になって三洋証券が初めてのことである。それから連鎖的に北海道拓殖銀行や山一證券が次々と倒産し、さらに翌年になると日本債券信用銀行や日本長期信用銀行が倒産するまでになった。
第3章「二波、そして三波―迷走する長銀処理、竹中プランの出現」
前章の最後に述べた日本長期信用銀行が破綻の兆候が見えるようになった時から本章の話は始まる。長銀の兆候については国内ばかりか、海外の経済ニュースも報道され、外国人投資家に対して悪印象を与えた。そのことから失われた時代のなかで特に混迷を深めることとなる。さらに2000年代に入ってくるとゼロ金利解除のこともあれば、量的緩和策を打ち出すなど、失われた時代から脱するための策に講じることとなった。
第4章「脱デフレの果てなき道―リーマン危機から「異次元緩和」へ」
株価の面では回復しつつあるも、それでもなおデフレから脱したとは言えなかった2000年代中盤から後半。その後はアメリカのサブプライムローン問題から端を発し、リーマン・ショックが起こり、再び経済は混迷を極めた。日本も例外ではなく、上向き始めていたい景気が、バブル崩壊以上の混迷を見せるようになった。そこからアベノミクスによって経済は大きく上向いたが実感としての回復はされていないという論調も多い。
そもそも金融政策は行っていたかというと、失敗していることの方が多い。全部が全部失敗かというとそうではないのだが、目立つところとしては金融危機を招いてしまった90年代が大きなものだったと言える。令和の時代に入って新型コロナウイルスの影響により、経済的にも大きな混迷を見せる今、経済はどのように変わっていくか、悲観的に観ている人も少なくない。
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