事業承継の羅針盤 あの優良企業はなぜ対策を誤ったのか?

サンライズパブリッシング様より献本御礼。

会社を長く続ける場合には単独で長期間社長や会長などのトップの座にいることには「年齢」と言ったところで限界が生じるため、「引き継ぐ」と言ったことが必要である。その「引き継ぎ」こそ「事業承継」と呼ばれるものであり、多くの会社では行っている。しかし行い方により、せっかく育った事業が衰退し、最悪倒産をしてしまうことも少なくない。本書は事業承継に関して、会社防衛を行うために何を行い、何を守ったらよいかについて失敗例を中心に取り上げている。

第1章「支配権」

家族会社の場合は子どもに経営権を譲るといった動きを起こすことも少なくない。しかし、その相続などを巡り兄弟などがいて、さらに全てが会社に関わっているとしたら相続における「骨肉の争い」のような事が起こり、臨時株主総会が開催され、解任されたというケースを取り上げている。そのケースをもとの対策法も伝授している。

第2章「乗っ取り防止」

会社の乗っ取り事案についてはこのところ数多く存在しており、ニュースにも取り上げられている。本章でも紹介されているのだがコロワイドによる大戸屋ホールディングスの買収についても言及しているのだが、実際に敵対的買収は成功している。今後はどうなるのかわからないが、実質的な内紛も起こっていた。特に敵対的買収や乗っ取りについては上場企業の中でもここ最近頻発しているケースと言える。

第3章「少数株主権」

たとえ株数が少なくても、いくらかの「株主権」が入ってくる。それは「議決権」や「訴訟提起」「株主総会招集」など持ち株の度合いによって変わってくる。しかしその少数株主における株主権は軽視してはいけない。軽んじ、株をばらまいたことにより、経営が立ちゆかなくなると言ったことがある。特に「株主」とのトラブルは裁判沙汰になるまで起こるのだから怖い。

第4章「株主総会」

上場企業における株主総会であれば多くの株主が集まり、議決を行うなどがよく知られている、では未上場企業ではどうかというと行っている所もあれば、1度も行われていないケースも存在する。その株主総会開催を巡ってのトラブルは特に未上場企業で起こっている。著者は未上場企業であろうとも、株主総会を開催することを勧めている。

第5章「財産権」

事業承継における財産の引き継ぎは経営ばかりではなく、自身の持っている株などの「資産」にまで及ぶ。さらに財産を相続で継ぐためには「相続税」がつきものである。その「相続税」の対策を巡ってのトラブル、さらには相続における成功例と失敗例をふんだんに掲載している。特に財産を引き継ぐことはケースによっては非常に難しいところがあることがよくわかる。

第6章「バトンタッチ・専門家」

会社経営の中で後継者に引き継ぐことが「最後の大仕事」と言える。後継者にどのようにして引き継ぐのか、タイミングはどうするのかなど、税金の面も含めてありとあらゆる面で検討することが必要になるのだが、実際には税金ばかり目が行ってしまうが、実際には専門家の相談も必要になることがある。しかしその相談をする専門家も選ぶべきである。

第7章「持株会社」

「持株会社」と言うと、どのような会社なのかというイメージを付くかというとなかなか難しいものであるのだが、事業承継の対策を行っていく上で持株会社をつくることは非常に重要な要素である。では持株会社はどのようにつくり、運営し、さらに資産配分をどうしたらよいかを本章にて伝授している。

第8章「従業員持株会」

特に第3章における少数株主権の対策としての一つに「従業員持株会」がある。これは何かというと、役員や従業員などに渡している株をまとめるというものであるのだが、これは従業員などの同意が必要である。その同意を得られることができればつくる事ができ、承継のトラブルは低くなるのだが、キチンと運営できていることが前提となる。

第9章「事業承継税制 他」

事業承継にも税金が必要になってくる。また承継の計画を進めていっても、税金や株などのトラブルによって頓挫するケースも少なくない。また税制の他にもやるべきことがあり、どのようなこと、さらには意識が必要なのか本章にてチェックリストとして提示している。

日本にはおよそ220万もの会社があり、そのうち3882社が上場企業である(「上場企業サーチ」調べ)。特に非上場企業の多くは同族経営をしている、あるいは一念発起して1代で築き上げると言った会社もある。その中で長く続ける観点で言うと事業承継はかなり重要になってくる。その承継を疎かにしてしまうと、ある意味血みどろの争いになってしまい、会社そのものを失ってしまうきっかけにもなる。そのための対策が全て詰まった一冊であり、もしも承継を考えているのであれば是非手に取った方が良い一冊である。

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