何とも不思議なタイトルである。本書には「虫」といった要素もあれば、ラテン語やイタリア語における「音楽」を意味する「ムジカ(Música)」という意味をなしている。その2つの要素を合わせてタイトル付けているのも面白味がある。
本書の主人公は音大の同級生グループがスランプ脱出のためにとある無人島へと訪れた。しかしその無人島には音楽の神が祀られていると呼ばれる島があるのだが、虫の大群だった。「ムジカ(Música)」を追い求めるはずが「虫か」というのはご愛敬だが、そのご愛敬では通じないほどの恐怖が彼らを襲う。
なぜ虫が彼らを襲うのか、そこには虫の「怒り」があった。よく物語の中で村の集落では神の怒りと称して、狂信的な人が、別の所からやってきた人を殺すと言った話を聞くことがあるのだが、それの虫版と言うべきか。しかし人間が襲う恐怖よりも、個人的には本書の様に様々な虫が襲われると言った方がよっぽど怖い(現に本書の様な虫が襲われる夢を何度見たことか)。その怒りを鎮めるための「鎮魂歌」ならぬ「鎮虫譜」が存在するタオ言う。その真実はどこにあるのかもまた本書の醍醐味である。
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