障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。

ここ最近起業にて「ダイバーシティ」と言う言葉を使う所が多くなってきた。ようは身体・精神などありとあらゆる場面で多様な人を雇い、育てるという概念が広がりを見せているというものである。もちろん障がい者も例外ではないのだが、障がいの度合いによっては難しい部分も否めない。また障がい者雇用というのも存在するのだが、稼ぎが無いと行ったイメージがもたれやすい。しかし本書は障がい者で働きながらも稼いでいる方々を取り上げている。

CASE1「10万円で働き方が変わる──予約の取れないフレンチレストラン──」

京都府舞鶴市に予約の取れないフレンチレストランがある。予約を受け付けていないのではなく、人気があり、なかなか予約が取れないと言うものである。しかもディナーの料金が1万円と高額でありながらも連日予約が入るほどである。そこで働く方々の多くは知的・精神・身体の何らかの障がいを抱えている方々である。給与についても格差はせずに平等に行うこと、そして障がい者それぞれの立場を最適にして、客・従業員・経営者双方でよい関係を築くといった事もなされていた。

CASE2「生きがいの分配──年商2億円に届いた奇跡のクッキー──」

滋賀県大津市にクッキーの製造販売を行う業者があり、長年にわたって地域どころか日本中で人気を呼び、今もなお注文が絶えないという。その工事の従業員の半数は障がい者であるのだが、障がい者の境遇はそれぞれ異なる。異なりながらも、どのようなポジションでもって、そしてどのように教育して育てていくかという苦心が本章にてありありとわかる。

CASE3「福祉×芸術=アール・ブリュット──試みの先にあるもの──」

美術的な活動を行うとなると美大を経て修行を行い、一人前になるといった印象が持たれるのだが、本章では美大に進学するなどの修行は行わず、固定観念にとらわれない表現を行うことができるようになったという。さらに日本に限らず、世界中で表現の輪を広げていく活動も行っており、ハンディを乗り越えての活動も行っているという。

CASE4「ワインとIT──本当の自立とは何か──」

障がい者を雇うのだが、障がい者として扱わず一人の労働者として扱い、なおかつ健常者も障がい者も関係なく、平等に関わっていく、そして福祉だとは思わず、常に先を見据えながら、働く。本当の意味での「自立」とは何か、岐阜県多治見市のワイナリーを取り上げながら考察を行っている。

障がい者の雇用について考える企業も少なくないが、いったいどのようにして働き、育てていくのか悩む企業も少なくない。そう考えると障がい者との関わり、雇い方、育て方などが全て本書にて詰まっている。実際にケーススタディといった形での実例もふんだんに取り上げられていることから、ダイバーシティを考えるのであれば、本書から入ってくるとよい。