電王

本書は創作ではあるのだが、実際に将棋の棋戦で「電王戦」と言うのが存在した。その始まりは2011年、故・米長邦雄永世棋聖対ボンクラーズとの戦いが始まりと鳴、その3年後には団体戦のような形で、5人の棋士がそれぞれのソフトと対戦した。その後は叡王戦のトーナメント優勝者が将棋ソフトと対戦すると言うものへと変わっていった。

本書が出版されたのは2016年で、当時はあり得ないとされていた。名人を含めたタイトル保持者と将棋ソフトとの対戦を描いているのだが、実はその翌年に電王戦にて本当の名人が将棋ソフトと対戦し、ソフトが勝利した。実際にニュースにまでなったほどである。

本書はAI研究の頂点に立つ人と将棋の頂点に立つ人との戦いを描いているが両者は小さい頃から知り合っており、その知り合った中であった「因縁」があった。その「因縁」を巡っての戦いが行われ、その展開を描いている。展開としては十分に楽しめたが、よくを言えば挿画のように対局の盤面を出すなどをしておくと、なお面白いものになったと思える。