鬼とはなにか―まつろわぬ民か、縄文の神か

明けましておめでとうございます。2021年も「蔵前トラックⅢ」をどうぞよろしくお願いいたします。新年一発目・・・としてはなんですが、この書評からスタートいたします。

最近でもよく話題となっている「鬼滅の刃」だが、昨年10月に映画化されるやいなや、社会現象にまでなり、とうとう興行収入が300億を超えるまでになった。日本に限らず海外でも公開されており、国内外にて人気を集めるほどにまでなった。その鬼滅の刃は主人公の竈門炭治郎が鬼と化した妹の禰豆子を人間に戻すための旅と戦いを描いている。

もっとも鬼滅の刃でも敵キャラとしてある「鬼」は元々、日本においては妖怪の一種として扱われた。怖い存在としても知られ、人喰いも行うと言った伝承さえもある。その鬼にまつわる伝承はどのようなものがあり、どう扱われたのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「鬼のクーデター あずまえびす、ヤマトに叛逆す」

本章では「太平記」にて記載されている鬼の伝説について取り上げている。中でも第十六巻にある平将門との関わりと、怨霊になっての叛乱を取り上げている。

第2章「怨霊は鬼か 鬼となる怨霊、ならぬ怨霊」

そもそも鬼はどのような存在かという議論になってくる。前章のように取り上げられた「怨霊」かという疑問も出てくるのだが、そもそも鬼は「霊」や「妖怪」と言った死人を表している。もっとも人が亡くなったときに仏教の側面では「鬼籍に入る」といった表現も用いられる。

第3章「鬼を祀る神社 温羅(うら)伝説と国家統一」

強さなどを表す表現の中に「鬼神」なるものも存在する。実際に神道では鬼を「神」として祀る所もあり、いわゆる「鬼神」といった扱いをなされる鬼もいる。その一つとして本章では「温羅伝説」を引き合いに出している。

第4章「女が鬼になる時 舞い踊る夜叉」

女が鬼になると言うと「鬼嫁」になる、というのはさておき、平将門伝説の中に、将門の娘がおり、その娘は五月姫と呼ばれたが、いつしか「夜叉姫」と扱われ伝説の鬼になったと言う伝承がある。

第5章「ヒミコの鬼道 神の道と鬼の道」

ヒミコ(卑弥呼)にまつわる伝説は諸説あり、学者間でも激しい論争が続いている。その一つとしてヒミコからアマテラスへの「神上がり」であるが、こちらにて「ヒミコ殺害説」なるものもあり、主張している学者も少なくないという。さらに言うと、ヒミコそのものが神として存在しているのか、もしくは怨霊における「鬼」の存在となっているのかの議論を取り上げている。

第6章「鬼門という信仰 都人の祟り好き」

今は言われているかどうかわからないのだが、強面の顔のことを俗に「鬼瓦」と呼ばれる様な事があった。もっとも「鬼瓦」は「鬼門」と呼ばれる、風水における縁起の悪い方向のことを表し、魔除けのために鬼門に向けて鬼瓦を向かせるといった事がある。その鬼門信仰はいかにしてでき、浸透したのかについて考察を行っている。

第7章「異世界のまつろわぬ民 山人・海人・平地人」

日本において、神話や伝承は数多くあり、サブタイトルにおいて「海人」「山人」といった存在もよく知られている。また鬼に関してで言うと、大晦日にある秋田の「なまはげ」の伝説がある。他にも岩手県大船渡市のスネカや石川県輪島市のアマメハギなどが挙げられる。なぜ鬼にまつわる祭や伝承が地方で生まれたのかを取り上げている。

第8章「鬼の栖(すみか) 縄文神の追憶」

「鬼の栖」と言えば、静岡県の修善寺にある旅館を連想するのだが、本章はそうでなく、元々伝承の面で鬼の栖とあされている神社や名所があり、それがいかにして鬼が棲み着いたとされたのかについて論考している。

日本の神話や伝承における「鬼」の存在は数多くあり、童話でもいくつか存在するほどである。もっとも「鬼」は鬼滅の刃に限らず、多くの小説・マンガ・アニメでも描かれており、文化的に縁が深いのだが、その元となっている伝承が本書でもってわかる。

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