つむじまがりの神経科学講義

「神経科学」とは何かというと、

脳を研究する多様な分野の総称。生理学・解剖学・薬理学・病理学・分子生物学・心理学・精神医学・情報科学・数理工学などにまたがる。1970年代に生まれた語で、学術的には、同義の脳科学より多く使われる。「広辞苑 第七版」より

とある。辞書的な意味だと結構難しいためかみ砕くと、脳や身体などを動かしたり、感覚を得たりするためには「神経」を通して、脳に処理される。いわゆる信号を伝達するための伝染のようなものを神経であるのだが、神経自体を科学的に考察を行うとなると、医学ばかりではなく、辞書にもある通り多岐に跨がっている。

そのため神経科学は科学や医学の中でもけっこうとっつきにくい学問としてある。その学問をエンタメの側面でわかりやすく講義しているのが本書である。

第1章「神経系とは何か」

ことに「神経」となると、引き合いに出すのが、電池とスイッチといった電気の流れがある。その流れをいかにして紐解いていくか、そして「神経系」と言ったものがどのような物であり、成り立ちはどうであるのか、そして動物によくある脳や脊椎といったものがどのようにしてつくられ、信号を伝えていくかなどかなりかみ砕いて解説している。

第2章「記憶のしくみ」

この神経科学の中でも根幹をなす部分として「記憶」がある。その記憶をいかにして蓄えていく、あるいは忘れていくか、海馬を含めた記憶回路の仕組みはもちろんのこと、蓄える・忘れるなかで細胞や神経がどのように信号を伝えていくかを取り上げている。

第3章「記憶の異常」

「記憶障害」なるものも存在する。それは認知症をはじめとした病気はもちろんのこと、災害や事件などで起こるPTSDもまた記憶障害の一つとしてある。それぞれの症状には神経系のどこが、不全となって起こるのか、そもそも認知症についても原因によって多岐に分かれているといったことも言及している。

神経科学は多くの学問と跨ぐことからとっつきにくく、入門書であっても、それぞれの学問をかじらないとなかなか理解が難しい部分がある。しかし本書は図解にして表しながらも、講義という形式で説明しているため、神経科学の入門書の中では最もわかりやすい。そのため神経科学を学ぶ最初としては本書は最適である。