チリのアタカマ砂漠にて、建設された電波干渉計は通称「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」、通称「アルマ」と呼ばれる望遠鏡であり、俗に「スーパー望遠鏡」とも言われている。完成したの2013年のことであり、宇宙などの天文学の研究において使われている。そのアルマを生み出した国の一つとして日本がいる。日本はアルマの建設にどのようにして関わっていったのか、その一部始終を取り上げている。
第1章「電気仕掛けの望遠鏡」
「アルマ」は望遠鏡でもあり、なおかつ電波干渉計でもある。特に電波干渉計の要素が強く、宇宙から届く電波でもって観測を行うというものである。宇宙からどのような電波を受け取るか、そしてどのようにして電波干渉計をつくり、どこに設置するか、「アルマ」の製作・構築の長い長い旅が始まった。
第2章「野辺山のサムライたち」
世界にはいくつもの天文台があるのだが、日本にも「国立天文台」があり、東京の三鷹を始めいくつものキャンパスなどを構えているが、宇宙電波観測所は長野県南佐久郡にある野辺山と呼ばれる所に存在している。その野辺山で活躍する人々がアルマの建設にどのようにして関わっていたかを取り上げている。
第3章「奪われた花嫁」
資金援助を受けて、アルマの製作をスタートしたが、順風満帆とはほど遠かった。イニシアチブを得た日本であるのだが、日本・アメリカ・欧州各国との共同開発となったが、会議も含めてのイニシアチブを巡る政治的な争いがあり、奪われてしまい、暗礁に乗り上げることもあったという。
第4章「魔法工場のデスマッチ」
宇宙望遠鏡や電波干渉計など、新しい技術を生み出す際は、様々な概念をぶつけていく、プロレスにおける「デスマッチ」よろしく、色々なものを駆使して試行錯誤を繰り返した。
第5章「凧揚げとガンダム」
新しい望遠鏡もとい電波干渉計は今までになかった事を行うわけであるから、良くある方法では全くうまく行かない。そのため、方法を試行錯誤するもうまく行かないことが連続した。とはいえ新しい方法はふとしたところから舞い降りてくる。本章では新しい発想として本章のタイトルを喩えにした考え方を取り上げている。
第6章「冷たいラジオの作り方」
ラジオというと、周波数の電波を受け取り音声が流れるシステムであるのだが、そのラジオが熱いかというとわからない。とはいえ本章のタイトルはその電波を宇宙から受け取る。その宇宙はほぼ絶対零度に近いほどの極寒であるため冷たいとしているのかわからない。
第7章「天空のセレモニー」
2013年にようやく電波干渉計「アルマ」が完成し、開所する前のセレモニーの一部始終を取り上げている。長い試行錯誤を経てようやくのお目見えとなった。
アルマの誕生により、天文学の研究も進歩を遂げているのかもしれない。しかしこのアルマができるまでの道のりは本書でも言及しているのだが、色々な国との関わりもあり、なおかつ新しい技術を生み出さなければならず、筆舌に尽くし難いほど困難な道だったことがよくわかる。この足跡と誕生が映し出された一冊であった。
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