並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし

面白い人は着眼点もまた独特である。もっとも「独特」と言える観点は、日常生活の中で生まれているという。

本書のタイトル自体は、けっこう宇宙人のような銘打ち方であり、なおかつ不思議ちゃんなのかなという印象を持たれてしまう。しかし本書の著者はある意味「宇宙人」と言えるほどの天才なのかもしれない。ユーモアにしても、着眼点にしても、自分では到底観ることのできないところをことごとく突いている。

車の運転にしても、エレベーターにしても、VRにしても、ごくごく日常溢れる題材なのだが、それぞれの要素の着眼点が、「どうしてこのように見ることができるのか?」と言ったものばかりであり、なおかつ読んでいくとある意味「痛快」な面白さもあるため、「独特」と言う言葉が、殊更強く表れている。小説作品ももしかしたら本書の様な表現でやっているとするならば是非読んでみたくなる、そういったエッセイだったし、本書の様なエッセイで他の題材も見てみたいといった期待感が膨らんだ一冊であった。