時代は幕末、場所は現在言う所の神奈川県横浜市神奈川区にある「神奈川宿」が舞台である。ちなみに神奈川宿は東海道五十三次における3番目の宿場であり、幕末の開国以降は外国人居留地がつくられたことにより、国際色のある宿場であった。
その神奈川宿の中にある「雷屋」は本来、宿屋でなく、茶店だった。実際宿屋における「旅籠」としての届を出していなかったことから無許可の宿屋、つまりは「もぐりの旅籠(はたご)」と呼ばれる所であり、お代も割高であった。そのためかどうかはわからないのだが、その宿に来る客は本当の意味でクセのある客ばかりであり、事件が起こってもおかしくないような所であった。
そのような場所でついに殺人事件が起こる。宿屋の主人はもぐりの旅籠であることを知っており、まともではない客たちであることがわかっているため、「病死だ」と一点張りだっったが、不審に思った主人公の女中が謎を解くといった物語である。ミステリー作品でありつつ、江戸時代の時代小説といった趣もあるため、両方の部分で楽しむことができ、ミステリーと時代、よくあるジャンルを融合することによっての斬新さを見出せる一冊であった。
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