90年代サブカルの呪い

もう既に20~30年以上前の話になるのだが、この頃に初めて出てきたアニメ作品の内、いくつかは今もなお愛されており、なおかつ今年新しくリメイクされたり、新作として映画やTVアニメ化するようなことがある。今となってはポップカルチャーの一つとして「アニメ」があったのだが、この90年代当時は「サブカルチャー(以下:サブカル)」の一つとして表されることが多かった。そのサブカルは全体を見てみると人・ゲーム・マガジンと多岐にわたる。この90年代におけるサブカルは今もなお「呪い」として存在していることを本書でもって指摘している。

第一章「鬼畜ブームの正体」

鬼畜系というと、ネットでは「まんがタイムきららMAX」の雑誌に出てくるキャラクター2人のことを表しているイメージを持っているが、90年代はむしろ雑誌にて本当の意味で鬼畜的所業を取り上げるものがあったという。中には周囲から見ても「悪趣味」と呼ばれるようなものまで存在しており、一部でカルト的なブームを起こすようなこともあった。

第二章「90年代という特殊な時代」

鬼畜系や変態系、さらにはキワモノなどがよく出てきた中で、社会的な議論を巻き起こした本がある。1993年に出版された「完全自殺マニュアル」である。自殺の在り方を取り上げながら、強く生きろというメッセージを込めたものだが、マスコミでも多く取り上げられ、公立図書館では「有害指定」されるといった動きもあった。また本章では音楽における「アンダーグラウンド」も取り上げている。

第三章「メンヘラ誕生」

メンヘラは今もなお扱われているのだが、元々「メンヘラ」は、

何らかの精神疾患を抱えている人や、抱えていると思われる人を指すネットスラングWikipediaより一部抜粋

とある。精神疾患などはよく「うつ」など呼ばれているのだが、ネット上で揶揄した「メンヘラ」として表現をする人も出てきたのも90年代の特徴としてある。もっともそのアピール自体は今もなお残っている「承認欲求」によるものであると指摘している。

第四章「暴走するエロ文化」

第一章で取り上げた「鬼畜系」と言うとエロ文化にもあった。特にAVについてはアブノーマルの系統が多く、なおかつそれに強いAV監督が全盛期を迎えたとされている。またこの時期に「鬼畜」の他に「ロリコン」と言う言葉も生まれた。

第五章「サブカル消えた人残った人」

おそらく90年代のサブカルを語る上で昨年8月に逝去した宅八郎がいる。そもそも宅八郎とはどのような人物で、どのような傾向があったのかを重点的に取り上げつつ、同時期に活躍したサブカルの中心人物の中で、消えてしまった人、残った人が誰であったのかを列挙している。

第六章「サブカルしくじり先生」

本章で取り上げているものは今も昔も犯罪行為と言えるものであるが、実際サブカル文化を醸成する中で犯罪スレスレの行為も往々にしてあった。本章ではその行為のうち代表的なモノをいくつか取り上げている。

第七章「この90年代サブカル漫画を読め!」

90年代のサブカルシーンにおいて、多くの漫画が生まれた。生まれた漫画の中で著者がサブカルの考察として進めている漫画をいくつか紹介しているのだが、その漫画の多くは本書に出会うまで知らなかったタイトルばかりである。

第八章「根本敬の悪影響」

根本敬は漫画家やエッセイストなどマルチに活躍されているのだが、本書の根幹の一つである鬼畜系をはじめとした過激な分野の中でも代表的な人物である。根本敬がこの90年代のサブカルへの影響について考察を行っている。

サブカルそのもののジャンル自体はかねてからあったものの90年に入って、多様化しており、なおかつ過激な方向へ向かっていった部分があった。その「過激」という意味合いは、今となっては受け入れられない部分もあるかもしれない。とはいえサブカルそのものの過激化・多様化を引き出したのが、この90年代における「サブカルの呪い」と言える。