ロヒンギャ問題とは何か――難民になれない難民

「ロヒンギャ問題」は今もなお続いている。しかしロヒンギャ自体は蔑称に近い部分があり、「ベンガル人」や「ベンガル系ムスリム」あるいは「ラカイン州のムスリム」といった表記になることも多い。

ロヒンギャの点でメディアに出たところ2012年以降に起こった移民問題、さらには2016年10月の掃討事件、さらには2017年8月以降の掃討作戦といったものがある。特に2017年の件はアウン・サン・スー・チーの対応で世界的な非難を浴びたことは有名な話である。

いったいなぜ「ロヒンギャ問題」が起こり、今もなお続いているのか、その本質を追っているのが本書である。

第1章「ロヒンギャ問題とは何か」

現時点でロヒンギャ難民がいるのはどれくらいなのかは実態がつかめていない。メディアや政府の発表では80万人にも、100万人にも上っているというが、あくまで「推計」である。問題の経緯自体を紐解いてみると、ミャンマーにあるラカイン州そのものの歴史を辿っていく必要がある。15世紀の時、ミャウー朝のアラカン王国にてラカイン州が栄えたときが始まりであり、栄えた当時は共存できていたのだが、イギリスをはじめとした欧米列強による植民地化してから共存関係が崩れ、隣国でもロヒンギャの民族を受け入れず、排斥するような動きがあり、紛争なども起こり、難民が出ている現実がある。

第2章「越境したロヒンギャの今」

ロヒンギャは紛争により、近くの国で難民キャンプにて苦しい生活を余儀なくされている。その生活の中で、境遇や支援の現状について取り上げている。

第3章「ロヒンギャとはいったい誰なのか」

ロヒンギャそのものがミャンマーのラカイン州に住む人々を総称して表しており、イスラム教が主流としてある。第1章でも言及したラカイン州そのものの歴史と、欧米列強による植民地化、経済発展などの歴史を取り上げている。

第4章「世界のロヒンギャ」

ロヒンギャ難民は隣国ばかりでなく、世界にて点在している。インドネシア、タイ、パキスタン中東諸国が中心となるのだが、それぞれの国々で難民キャンプを張っているロヒンギャたちはどのような境遇を迎えているのかを取り上げている。

第5章「難民支援とロヒンギャ」

難民支援は世界各国で行われている。中には政府や国際機関、NPOといった組織によるものが多いのだが、その支援についてどのような動きを見せていたかを紹介している。

第6章「難民になれない難民としてのロヒンギャ」

本来であれば難民は国籍を持つことによってなることができるが、ロヒンギャにおける難民問題の中には無国籍の人も多く、そのことにより、ロヒンギャ問題はよくある難民問題よりも深い闇を持っている。それはなぜかというと、国籍がないと難民申請をしても難民にすらなれない。そのような人々がどのようにして生活を送ってきたか、その現状を追っている。

第7章「アナン報告が示すロヒンギャの未来」

元国連事務総長のコフィ・アナンがラカイン州諮問委員会にて行われた、調査報告をもとにした提言がある。ミャンマー政府に対しての提言があり、全部で17個あるのだが、実際に政府は提言を行っているかどうかは不明である。

ロヒンギャ難民問題は今もなおある問題である。本書のサブタイトルにある「難民になれない難民」と言う意味合いにも他の難民問題とは異なり、深く、複雑であることがよくわかる。政府、さらには国連でも本腰を入れて取り組んではいるものの、各国の思惑によって解決へ至るまでにはまだまだ遠いと言うほかない。