お葬式の言葉と風習―柳田國男『葬送習俗語彙』の絵解き事典

新型コロナウイルスの影響は様々な業界にまで及んでいる。特に飲食業界は倒産などが相次いでいると言ったニュースが出ている。また人の死に関わる葬送業界もまたその煽りを受けており、葬送ができない、あるいは違った形で行わなければならないといったことを強いられるケースもあるという。特に感染が拡大し始めた第一波による緊急事態宣言の時は、看取るどころか、無言の帰宅ができたのは荼毘に付されてから、といったケースもあったという。

こういった時代だからでこそ七なのかはわからないのだが、そもそも日本におけるお葬式、もとい喪に服す作法や風習はどのようなものなのか、その根源を本書でもって追ってみようと思う。

1.「喪のはじまり~お葬式の奇妙な隠語」

そもそも葬式には「隠語」がある。「国替え」と言う言葉である。生きている日本という国から、あの世という「国」に移ることを意味しているのだろう。この「国替え」の他にも葬式や喪に服すなどを表す「隠語」は地域によって数多くある。その隠語を一つ一つ紹介している。

2.「死亡直後の作法」

死亡が確認された時に何を行うかと言うところでの慣習がある。枕返しや簾(みす)は今も行われているところが、地域・家に寄ってはあるのだが、他には既に廃れたものもあり、本章にて紹介されている。

3.「湯かん・納棺、通夜、出立ちの盃」

亡くなった人を棺に入れるにしても、作法や慣習は存在する。現在では装いをつけて、死化粧を行い、送り出すといったことが一般的に知られているのだが、地域によっては入棺の仕方にも独特な作法があったという。

4.「野辺送り~死人とともに冥土への旅路」

通夜・葬式を経て、荼毘に付されるまでは霊柩車で運ばれることが一般的だが、かつては墓場まで行列を組んで歩き、偲ぶという「野辺送り」が存在した。今も地域によっては存在するかも知れないのだが、昨今の交通事情では行われないことの方が多い。

5.「三昧にて」

葬儀等を済ませた後にお墓に送ると言ったことが行われるといったこともある。特に土葬の場合は荼毘に付すといったことはなく、墓まで送り、埋めるといった動きがある。もちろんその土葬の方法にもまた慣習がある。

6.「野帰り~死者とかわす無言劇」

土葬をはじめとした葬送を終えた後に、何を行うか、塩をまくと言ったこともあれば、清めの水をで洗うと言った風習。さらには葬送を終えた後の御膳といったものまである。

7.「日本人の弔いの源流」

もっとも弔いの方法は時代と共に変化を行っている。それが宗教的な理由如何問わず、である。古代から存在したものを続けているものから、宗教と地域事情を絡めたものまである。

8.「四十九日まで」

没後49日間は日次・週次で喪に服し、49日後からは月命日、周忌・回忌といった節目で弔うことが一般的とされているのだが、その49日まで、もしくはその後に行う風習もかつては地域によって行われるものも異なっていた。

今も昔もお葬式は形が変われど存在し、なおかつ死者に対しての風習も行われていた。しかしながら時代は変わるものであり、なおかつ冒頭でも述べたとおり新型コロナウイルスの影響により新しい葬送の仕方といったものも出てきて、葬送はもちろんのこと、日本独自の風習もあり方が問われているのかも知れない。