デジタル化する新興国-先進国を超えるか、監視社会の到来か

デジタル化の波はとどまることを知らないのだが、特にその度合いが強いのは、中国やインドと言った「新興国」と呼ばれる国々である。最先端技術の「実験場」と呼ばれるような場所があり、世界的にもイニシアチブを取ろうとしている国まで存在するほどである。一方で日本ではどうなのかと言うと、後れを取っている現状にある。とは言えど「デジタル化」自体は必ずしも良いものではない。時代の先端を取ることができる一方で、監視社会への懸念も存在するほどである。本書ではそのデジタル化の現在と、日本のあり方について取り上げている。

第1章「デジタル化と新興国の現在」

新型コロナウイルスの影響があったかどうかは不明だが、企業ではデジタル化をすること、あるいはツールそのものをデジタル化して成長につなげる、いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」を進めている所が多くある。中にはオンライン診療といった、インターネット環境を通して診察を行うといった動きもあるが、実際の所中国では行われているという。それだけでなく、デジタルを利用した新しいビジネスを次々と立ち上げ、中には急成長を遂げている所も少なくない。

第2章「課題解決の地殻変動」

長らく業界や経済において「課題」とされてきたものが、デジタル化によって一気に解決化へと導くことができるようになったという。その導くまでのプロセスについて取り上げているのが本章である。

第3章「飛び越え型発展の論理」

デジタル化に伴う発展は、デジタルそのものの世界でも起こっている。その「発展」の中身とはいったい何なのか、そしてよくあるスマートフォンのアプリでもある「発展」が見られているのだが、どのような発展があり、発展がある理由とは何なのかを紐解いている。

第4章「新興国リスクの虚実」

デジタル技術を育ませるためには、サーバーなどのインフラが不可欠である。しかしここ最近では、クラウドサービスに広がりを見せており、特にクラウドコンピューティングは様々な企業で利用している(Amazon Web Servicesが有名どころ)。もっともクラウドコンピューティングのサービスは日本はおろか世界各地の企業においても使われているほどである。

先ほどまでは新興国がデジタル化のイニシアチブを取っていると書いたのだが、インフラ面においてはアメリカがリードしている事実がある(言わずもがなAmazon Web Servicesを含めたクラウドコンピューティングのサービスの多くはアメリカでもっとも多くつくられ提供している)。そう言う意味での新興国にまつわる「虚実」を本章にて指摘している。

第5章「デジタル権威主義とポスト・トゥルース」

かつては大企業や財閥と言ったものがあったのだが、ここ最近ではGAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大プラットフォームにてデジタル面では席捲している。欧州ではGAFAに対し、独占禁止法違反に抵触しているかの調査や公聴会が行われるほどにまでなっている。それだけデジタル権威主義が広がりを見せているという事実も存在する。

第6章「共創パートナーとしての日本へ」

では日本の立ち位置はどうあるべきか。デジタル化は進んでいるとはいえど、その速さは他国に比べて劣っていると言うほかない。その中でどのような立ち位置が求められているのか、そのことについて取り上げている。

新興国のデジタル化は日本に比べて速いことは知られているが、世界に席巻するかどうかはまだまだ未知数である。既にGAFAといった巨大企業があり、そこと競争していかないと行けないことを考えると、先進国を越えるかどうかは疑わしい。むしろ中国のように「監視社会」がさらに促進されるといった懸念が存在するという、現状と闇について知ることができる一冊と言える。

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