源氏五十五帖

源氏物語と言えば不朽の名作であり、古典の中でももっとも親しまれている作品の一つである。瀬戸内寂聴をはじめ多くの方々が現代語に翻訳・解釈を行っており、ここ最近では読みやすくなっている作品にもなっている。

本来であれば源氏物語は完結しているのだが、本書は逆説的に「未完だった」という主張から始まる。なぜ未完なのか、そこには五十四帖ある物語の後に幻となる一帖があった物語を描いている。そもそも源氏物語は恋愛模様ばかりではなく、光源氏の栄光と没落、政治的な闘争が描かれているのだが、特にこの五十五帖目は権力闘争の部分が強く描かれているという物語である。

しかもその物語は時の平安時代の中である権力闘争の火種になっていた。その闘争の一部始終を本書の物語としてしたためられている。時代物であるのだが、ミステリーの要素が強い異色の一冊であった。