「ロマネスク」と言う言葉自体は聞いたことがある方は数多くいるかもしれない。しかし根本的な意味を聞くとわからない方が多いかも知れない。「ロマネスク」とは、
中世、11世紀から12世紀中葉にかけて南フランスをはじめ西ヨーロッパ諸国に行われた建築・彫刻・絵画の様式。ゴシック様式に先だち、教会建築を中心とし、古代ローマやゲルマンの諸要素と共に、東方趣味の影響をも受けている「広辞苑 第七版」より
とあり、中世における芸術そのものを担っている。芸術というと、その後に当たる近世の「ルネサンス」が有名どころではあるのだが、その前の所で有名なモノとして「ロマネスク」がある。
かくいう私も本書に出会うまでは、吹奏楽をやっていた経験からジェイムズ・スウェアリンジェンが作曲した曲を思い出す。
それはさておき、本書はロマネスク文化がなぜ生まれ、語り継がれ、なおかつどのような人物が生きてきたのかについて取り上げている。
第1部「ロマネスクの原点」
そもそも「ロマネスク」は美術様式の一つであり、10世紀~12世紀にかけてつくられた建築や美術を表している。しかしつくられた当初はそう名付けられてはおらず、正式に名付けられたのは19世紀に入ってからのことである。
ロマネスクの様式で最も特徴的なものとして「アーチ」をふんだんに使っているところにある。とりわけ橋をはじめとした建造物においては、連続アーチが使われており、古代ローマ建築を連想させることから「ロマネスク」と名付けられたとも言われている。
第2部「古代から中世へ」
第1部でも取り上げたとおり、「ロマネスク」は古代ローマを連想するような建築・美術を連想するところがあり、古代と中世の媒介をなすような存在でもあった。またロマネスク文化が栄えた時代には宗教的な要素も色濃くあった。当時は国とキリスト教徒の関係は非常に強く、なおかつ異教に対しての粛清、さらには魔女狩りといったことなども行ったことからそれらの「罪」を見出すための舞台や建築・美術といったものもいくつか見られる。
第3部「ロマネスクを生きた人々」
ロマネスク文化が栄えて生きた中で生きてきた人々を取り上げている。様々な境遇を経て、建築や美術へと昇華して行ったのか、その姿が映し出されている。
昨今の建築でもロマネスク文化や美術は残っているのだが、ルネサンスの印象が強くなってしまい、思っているほど残っていない現実がある。歴史や出来事によって、文化が消されると言ったことを聞く。そう考えるとロマネスクはもっとあったのかもしれない。とは言えど遺されたものの中でロマネスク文化は何を意味しているのか、それがわかる一冊である。
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