コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か

新型コロナウイルスは一昨年の12月から始まり、現在もまだ猛威を振るっている。日本でも昨年の4~5月まで1回目の緊急事態宣言が出され、今年の1月から2回目の緊急事態宣言が発令され、現在に至っている様相である。

コロナによって倒産、あるいは失業を迎えた企業・人も少なくなく、実体経済において大きく悪影響を及ぼしていることは間違いない。現在に立ってはワクチンが接種され始めたとは言え、まだまだ安心できない状態が続いている現状もある。そのコロナ禍、もとい「コロナ危機」と言われているなかで社会はどのように変化し、そしてアフターコロナの時にどのような変化を生じていくのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「アウトブレイクの経緯」

発生源については中国と断定されており、特に中国の湖北省武漢市において2019年の12月から感染が拡大したことが始まりとされていた。この頃はまだ日本では「対岸の火事」といった認識だった。しかし2020年に入って、武漢市以外、さらには中国以外でも検出され、同年1月15日に初めて日本における感染者が出た。それから検疫体制が強化されるなど、メディアではあまり取り上げられなかったが対策本部を設置し、早期対策を行っていった。とはいえど、対応自体は遅れている所が散見された。

第2章「パンデミックに覆われた世界」

コロナの感染拡大は私たちの想像を遙かに上回るものだった。またダイヤモンド・プリンセス号の感染拡大もあり、日本でも感染拡大が心配された。ちょうどこの時期は2月であり、その月の終わりには一斉休校や北海道に限定されているが緊急事態宣言が初めて発令された。この時期に入る前後からマスク不足が目立つようになり、マスクが入荷されると、行列ができて、マスクを買い求める人も多くなった。さらに消毒液やウェットシート、体温計が不足となり、インターネットのデマ情報が拡散することでトイレットペーパーやティッシュ、パン、カップ麺、缶詰などが不足となっていった。

第3章「コロナ危機の分析」

冒頭でも書いたとおり、1回目の緊急事態宣言が発令されたのは2020年4月8日である。この時期を前後して、「総動員的自粛」が広がりを見せた。ほとんどの店が休業し、さらには公共の場所もほとんどが閉館が相次いだ。それがGW過ぎまでずっと続き、感染の広がりが鈍化し始めて、5月25日に1回目の緊急事態宣言が解除された。

本書は2020年の7月に出版されたためここまでの事実を述べて、分析を行っている。そもそも約半年の経緯の中でメディア、国、私たちはどのように対応していったのかを分析している。特に大きかったところとしては「メディア」のリードである。「正しく恐れる」判断を失わせ、所々でネガティブな情報を流布し、十分な説明なくあたかもミスリードさせる姿勢について批判的に取り上げている。さらに政府もまたマスメディアに耳を傾けすぎているのではないか、といった批判も行っている。

第4章「新しい冗長性の時代」

新型コロナウイルスの影響により、社会自体も「新しい~」を求められるようになった。しかしどのようにして新しいものを求めていくのか、そして新型コロナウイルスをきっかけにメディア、政府、私たちの生活とどのような変化が求められるのかを取り上げている。

1回目の緊急事態宣言の後は少しずつ縮小傾向に入ったかと思いきや、夏には第二波、冬には第三波が起こり、特に第三波の影響が非常に強く、2回目の緊急事態宣言が発令中であるが、3月21日で解除されるが、本当のコロナウイルス感染拡大の終わりは定かではない。もっと言うとワクチンの接種は始まっているのだが、いつ第四波がきてもおかしくない状況にある。終息が見えない中で私たちの生活はもちろんのこと、政治・メディアなど多角的な社会システムの「変化」が求められていることは間違いない。