老いと外出―移動をめぐる心理生態学

人は誰しも老いる。しかしその老い方によって、生き方そのものも変わり、なおかつその変化によって見える世界も変わってくる。本書はその老いと共に外出をはじめ、思考や行動にどのような影響を与えていくか、さらに高齢者の心理と体験はどうなるのか、著者自身が特別養護老人ホームを取材をもとに分析を行っている。

1章「屋内に落ち着く」

特別養護老人ホームでは部屋の中にいる方も少なくないが、一定の時間になると同居者との語らいを行う時間もある。屋内で落ち着くようなことが多いのだが、著者自身が老人ホームの入居者を訪ねていくと、老人ホームならではの事情が見え隠れする。

2章「外縁に留まる」

1章の屋内に落ち着くと変わらないのだが、個室でゆっくりしているときに見える窓の外の眺めを見る入居者もいる。その外に表れる変化を愉しむと言うのもあるのだが、外を見ることによっての心境の変化などもあるのだという。

3章「車イスで出歩く」

入居者の外出を行う場面を取り上げている。老人ホームにも外出のことについては様々であり、入居者によっても外出できる時間のある・なしも異なる。中には二足歩行ができず、車イスに乗りながら外出する入居者も少なくない。

本章ではあくまで車イスで移動しながら外出する時の姿、心境などを取り上げている。外出と言ってもそれ程遠くへは行けないのだが、その中で見える新しい風景や体験といった時に入居者がどのような心境になるのかを追っている。

4章「自転車で出かける」

遠くへ移動するときは、職員が自動車で運転するといった手段を執るようになる。移動する先は様々であるが、多くはスーパーやショッピングセンター、さらにはホームセンターであることが多い。もちろん車を降りた後は車イスに引かれながら移動して、商品を物色したり、買い物を行ったりする。

5章「屋内に帰ってくる」

外出を終えて、老人ホームに戻ったとき、充実した表情で戻ってくる人もいれば、疲弊した表情で戻ってくる人もいる。それぞれ外出で得た体験がどうであったのかを物語っていた。

6章「身体に空間をつくる」

老いると、手足の筋力だけでなく、感覚も衰える。特にものをつかむことが日に日にできなくなると言ったこともある。そのため何気ない仕草や行動であっても、新鮮な価値を見出すようなものになる。その事例が本章では取り上げている。

本書はサブタイトルが非常に重要な意味を持つ。特別養護老人ホームに入居する方々は移動や行動などを通して、どのような心理を働くのか、実際に接してみて分析を行っている。そこには私自身でもわからない感覚であっても、いつか同じような年齢になってくるとわかるものがある。そのようなメッセージを残しているのかも知れない。

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