有名な話であるが、織田信長はよく「うつけ者」「大うつけ」と呼ばれた。その「うつけ(虚け)」とは、
1.中がうつろになっていること。から。空虚。
2.気がぬけてぼんやりしていること。また、そのような人。まぬけ。おろか。「広辞苑第七版」より
とある。間違いなく、本書のタイトルはこのうちの2.にあたる。
しかし本書の主人公は信長ではなく、当時信長の配下であった木下藤吉郎秀吉、後の豊臣秀吉である。
木下藤吉郎秀吉は信長の家来として忠実に働いたことで知られているが、実は藤吉郎もまた、周囲から空虚な男だった。その原因の一つとして環境にあった。信長の配下ならではの複雑な事情が絡み合い、夫婦仲は嫌悪となり、信長との関係も微妙なものになっていく。元々は明るい藤吉郎が、だんだんと暗くなり、厳しい判断を迫られる場面も多々あった。
藤吉郎、後の秀吉が信長の家来として、どのように進んでいったのか史実はあるものの、内面についてはまだ謎のままであった。本書は創作であるものの、家来の時の藤吉郎は暗かったのではないかといった観点から描かれており、ある種の斬新さがあった。
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