本書のタイトルにある「尊厳」は辞書で調べてみると、
とうとくおごそかで、おかしがたいこと「広辞苑 第七版」より
とある。優しく紐解こうと思ったのだが、実を言うと哲学上最も難しい事柄の一つであり、なおかつ人間として生きて行くに当たっての重要な要素でありながら、どこまでが「尊厳として成り立つのかがわからない。しかも「尊厳」と言う言葉は、知られている者として人間としての死ぬ権利の一つである「尊厳死」というものがある。
では「尊厳」とはどのようにして哲学的観点から紐解いたのか、その歴史と意味について取り上げている。
第一章「空っぽ頭の道徳家たちの合い言葉」
人間としての「尊厳」を紐解く中で出てくるのはキケロ、カントなどがあるのだが、特に印象の残る部分としては「陰鬱な哲学者」として知られるショーペンハウアーである。著者自身もショーペンハウアーの論考が正しいと主張している。
第二章「尊厳の法則化」
「尊厳」はしばしば法律や国家の場でも使われることがある。日本でも日本国憲法の中で「基本的人権の尊重」がある。これもまた「尊厳」の一つであり、なおかつ「尊厳」は「人権」とともに語られる。
本章では特にドイツやフランスにおける裁判の記録からどのようにして「尊厳」が法則化されたのかを紐解いている。
第三章「人間性に対する義務」
日本国憲法にも「教育」「勤労」「納税」の義務がある。しかし本章では憲法と行った法律論ではなく、あくまで本書の根幹である「哲学」における「義務」を取り上げている。その中には「人間主義」や「外在主義」と言ったものが挙げられる。
「尊厳」は簡単にひもとけるものではない。もちろん法律において制定されているとは言え、どこまでが「尊厳」として成り立ち、どこからが成り立たなくなるのか、議論は絶えない。しかしながら歴史的な哲学者が「尊厳」の論考に挑戦し、なおかつ紐解いた道が本書にて表されている。
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