半逆光

人を好きになってしまうことに、解などない。本書帯より

「好き」といった感情があるとするならばその通りかも知れない。しかし解の中には倫理的に、社会規範的に許されざる「好き」があることもまた事実としてある。その一つとして「不倫」が挙げられる。とある俳優が「不倫は文化だ」といった発言で騒動になったことは一昔前の話になるのだが(後に本人が否定した)、実際に不倫をした・されたとなるとどのような感情になるのだろうと考えてしまう。

その「不倫」を題材にした作品が本書である。子どもの独立を機に、部屋の整理をして初めてバレたと言うものであるが、その期間がなんと21年以上も続いていた、もっと言うとバレていなかったのだから驚きである。しかもその不倫の顛末を1冊の本として上梓し、「最高傑作」と称されるほどだったという。

また本書にはもう一つの側面がある。夫婦の子どもが就職して家を出る「自立」もあれば、夫婦の関係から長い不倫が明るみになっての「自立」といった2つの「自立」がある。そう言う意味では単純な不倫や恋愛では片付けられない魅力が本書にはある。