地方の論理

少し前までは「首都圏一極集中」が長らく進んでいたのだが、新型コロナウイルスの感染拡大の要因もあってか、一極集中が崩れているような印象がある。人材派遣業の大手であるパソナは東京から淡路島へ本社の主要機能を移動すると言った報道もなされ、芸能プロダクションのアミューズも本社を東京から山梨県の富士河口湖町に移転する発表もあった。

本社機能を地方に移転するといった動きもあれば、就職・転職を機に首都圏から地方へUターンやIターンといった動きもある。本書はそれらの動きとともに、地方がどのような発想・論理でもって動き、地方ならではの強さを見出しているのか、そのことについて取り上げている。

第1章「健全な国のかたちを目指して――コロナの教訓、一極集中のリスク」

冒頭でも述べたように、新型コロナウイルスの感染拡大により、一極集中が崩れ始めている。地方に移転する企業も少なくなく、なおかつテレワークの推奨によって首都圏で仕事をする意味もなさなくなってきた。そのために一極集中から分散化へと進めているのだが、著者はむしろこの分散化が進み、なおかつ中央省庁もまた地方に分けて「分権化」をつくる事も推奨している。

第2章「辺境からの発想――ハンディをエネルギーに」

地方となると、「距離」といった物理的なハンディは否めない。しかし地域政策を行う中でも逆に「距離」といったハンディもある。それは北海道や沖縄の問題について首都圏が解決は難しく、むしろ地元民の発想や経験を活かすことにより、課題が解決するのではないかといった考えがあるという。

第3章「共生の思想――独占と排除を超えて」

もちろん地域だけで発想や解決しろと言うわけではなく、ノウハウや考えを独占しろと言うわけではない。独占や排除を超えて、地域同士をはじめ、国同士、さらには異なる人同士などの「共生」を持つことにより、より良いものになっていくのではないかという主張である。

第4章「連帯のダイナミズム――つながりと信頼が生み出す力」

著者は釧路公立大学の学長も歴任しており、釧路に関する政策もいくつか取り上げている。本章でも釧路市が行っている「自立支援策」を引き合いに出して、社会的な困窮にある人をいかにして救い、自立を図っていくかを取り上げているほか、2018年の9月に起こった「北海道胆振東部地震」における北海道全土の「ブラックアウト」による解決に向けた動き、そして教訓づくりなども取り上げている。

かつて自民党では「地方創生」といった政策を掲げていたのだが、実際にそれがうまく行ったのかは疑問にある。しかし地方は国が推進しなくても、地方それぞれの力で「創生」して行っていることは事実としてある。地方ならではの力と論理がそうさせており、アフターコロナになったとき、地方の力はさらに強まっていくのかもしれない。