本書の表紙を見ると、何かディストピアな感じがしてならない。もっとも夕暮れなど風景によってはディストピアのイメージが拭えないようなものがあり、昨年から続いている新型コロナウイルスの影響による外出自粛で、本来であればいつも人だかりのある場所が誰もいなくなると言った風景もまたディストピアとも言える。
それはさておき、本書はとある書店の屋上で「世界が壊れはじめている」と言う言葉を聞いてから物語が始まる。生きることの素晴らしさはもちろんのこと、今ある日常がどれだけありがたいことなのかと言うことを知らしめる。
本書は「壊れ行く世界」と言う意味合いで物理的に壊れ行くさまを描いているが、実際に世界的にも新型コロナウイルスの感染拡大が起こっており、新しい生活様式を余儀なくされる。もっというと変異が重なると致死性も高まってくることも考えられ、その影響で人類が亡ぶという最悪の青地図も見えてしまう。
本書とは形は異なれど、今まさに「壊れはじめた」と言えるのかも知れない。本書の物語を見てそう思わざるを得ない。
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香月 夕花 新潮社 2020年05月20日頃
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