日向を掬う

本書の物語は温かい家族の物語であるのだが、着目すべきは「物語前」のことである。ここ最近でも「精子提供」と言ったことが広がりを見せ始め、特に2020年あたりからはSNSを通じて行われるようになり、急増している。また精子提供のみならず、「精子取引」もあり、同じように提供・利用が急増している。

それはさておき、本書は精子提供を行い、生まれた少女が身寄りをなくしてしまい、提供者の家族へと行き、後見人として迎え入れることになった物語である。その提供者は40代でありながら半ばニートのような生活と言った自堕落な日々を送っていた。少女の出会いが、少女を、男性を、そして周囲の人々を変化させた。

少女も少女で複雑な環境で生まれ、育ち、そして自身の生きている意味に悩む少女に対して、男性をはじめとした周囲はどう接していくかを描いている。

「家族」や「親子」の定義は確かに変わっていると言った方が良いかも知れないが、不変的な部分もある。しかし本書のような「家族」や「親子」は受け入れられないと言った方も中にはいるかもしれない。しかし本書のような家族も、また「家族」だと言うことを知ることができる一冊とも言える。

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