交通インフラはなくてはならないのだが、インフラであっても、経営的な悪化が避けられず、倒産の憂き目に遭うところもある。バス会社であっても倒産した所はいくつかあり、観光バスなどがあるのだが、倒産までは行かなくとも経営統合を行うなどの動きもある。
本書は110年以上もの長い歴史を持っている西鉄バスにおける生き残りを賭けた取り組みについて取り上げている。
第1章「時代に合わせた近年の新たな取り組み」
チャールズ・ダーウィンの言葉に、
最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一、生き残るのは変化できる者である。
と言う言葉がある。これは生物の進化に関しての言葉であるが、ビジネスの世界でも同じ事が言える。西鉄も時代に合わせての「変化」を行っているが、いったい何を行っているのかを取り上げている。
第2章「西鉄110年のあゆみにおける西鉄バス」
西鉄バスそのものの歴史を取り上げているが、もっとも九州のバス事情はもちろんのこと、バスと電車の2つの側面における歴史などが記されている。特に福岡に関しては戦前の時は数多くのバス会社が設立されて、統合の繰り返しだったという。
第3章「福岡都市圏・北九州都市圏の取り組み」
西鉄バスは2つの都市圏を担っている。一つは福岡都市圏、もう一つは北九州都市圏である。2つの都市圏には電車があるのだが、その電車を通してどのようにバスの交通網でまかなう取り組みを行っているのかを取り上げている。
第4章「最大規模を誇る西鉄の高速バス」
西鉄バスは高速バスにも力を入れている。「水曜どうでしょう」で「キング・オブ・深夜バス」として名を馳せた「はかた号」もその一つである。それだけでなく、福岡から九州一帯、さらには中国地方などの高速バスもまかなっており、「最大規模」に名を恥じない活躍を見せている。
第5章「西鉄バスの車両のあゆみと考え方」
バス車両にも歴史がある。今となってはバリアフリー化を進めるための低床のバスもあるのだが、他にもどのような車両の革新があったのか、歴史と共に取り上げている。
第6章「西鉄バスの経営戦略と業界をリードした取り組み」
西鉄には高速バス自体が「最大規模」とあるだけに、バスターミナルもまた充実している。特に現在は西鉄天神バスセンターは高速バスターミナルを多く受け入れつつ、スターバックスやローソンなどの買い物の利便性も向上するといった試みがある。他にも経営的な要素での戦略についても取り上げている。
第7章「地方バスの取り組みと地域との連携」
元々バスは「ローカル」といった側面が強い。ローカルであるが故の厳しさは年々増す一方である。特にバス会社によっては年何本かの路線を廃止すると行った苦渋の決断を行う所も少なくなく、岐路に立たされているが、西鉄では地域と連携してどのような取り組みを行っているのかを取り上げている。
第8章「西鉄バスの安全とサービス・人づくり」
バスは多くの人を運ぶため「安全」が特に重視される。そのほかにもサービスをいかにして充実するか、運転手やスタッフの人づくりをどうしていくかなども課題としてあるのだが、西鉄も抜かりなく行われている。
福岡・北九州を担う所から、もはや九州一帯、さらには東京に至るまでの高速バスをも担う西鉄バスは長い歴史のなかで、様々な変化をつくり、栄えている。その一端を垣間見ることができた一冊と言える。
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