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2021年5月

盆踊りの戦後史 ――「ふるさと」の喪失と創造

盆踊りというと夏の風物詩であるため、季節はまだ先であるのだが、もっと言うと新型コロナウイルスの感染拡大によって盆踊りのイベント自体の開催が難しくなった。そもそも盆踊りとはいつどのように生まれ、栄えていったのかという疑問がある。本書は盆踊りそのもの歴史について取り上げている。 第一章「日本の近代化を盆踊り―明治~昭和初期」 盆踊りそのものの歴史は諸説あるのだが、一遍上人が各地に踊り念仏を布教したこと […]

遊王 徳川家斉

徳川家斉は江戸幕府の11代将軍であり、江戸はもちろんのこと、鎌倉・室町を含めた将軍、さらには征夷大将軍の中では最も在位の長かった将軍であり、50年もの間その座にいたのだが、12代将軍家慶に譲った後も逝去するまでの4年間は実質的な権力を握り「大御所時代」をつくったため、実際には54年もの間、実権を握った人物である。 実権を握るほどの権力やカリスマ性があったかというと、実はそうではなく、老中が家老らに […]

西鉄バスのチャレンジ戦略

交通インフラはなくてはならないのだが、インフラであっても、経営的な悪化が避けられず、倒産の憂き目に遭うところもある。バス会社であっても倒産した所はいくつかあり、観光バスなどがあるのだが、倒産までは行かなくとも経営統合を行うなどの動きもある。 本書は110年以上もの長い歴史を持っている西鉄バスにおける生き残りを賭けた取り組みについて取り上げている。 第1章「時代に合わせた近年の新たな取り組み」 チャ […]

寄席の底ぢから

ここ最近、ニュースで寄席の話が出てきた。それは東京都内で3回目の緊急事態宣言が出る直前に休業要請が出たのだが、「社会生活に必要なもの」と主張し応じず、通常通り続ける方針だったが、一転5月1日から休業することに踏み切った(12日に再開済み)。また寄席の文化を廃れさせないために、ゴールデンウィークの1日だけ、無料で生配信をやった。 このニュースを通じて、寄席は社会生活に必要なのかという議論があったのだ […]

われらの世紀 真藤順丈作品集

「戦い」と言う言葉は戦争だけに扱われる言葉だけではない。スポーツにしても、過酷な運命に対抗するときも、自分自身の精神と身体を賭しても「戦う」姿がそこにある。 本書はその「戦い」と、戦いを通じて、生きていく姿を描いた短編集である。 方や第二次世界大戦の中での「戦い」、方や民族の誇りを賭けた「戦い」、方や芸道の高みへ登るための「戦い」とそれぞれの立場からの「戦い」が記されている。 短編集であるだけに、 […]

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

M-1は2001年からスタートし2011年から2014年までの休止期間はあったものの、現在もなお続いている。なお優勝者のほとんどは吉本興業であり、それ以外の芸人が優勝したのは過去に3組しかない(最後に受賞したのは2007年のサンドウィッチマンである)。20年ほど歴史のあるM-1はなぜ関西、もとい吉本が席捲しているのか、そして関東芸人はどう立ち向かうべきか、そのことを取り上げている。 第一章「「王国 […]

日向を掬う

本書の物語は温かい家族の物語であるのだが、着目すべきは「物語前」のことである。ここ最近でも「精子提供」と言ったことが広がりを見せ始め、特に2020年あたりからはSNSを通じて行われるようになり、急増している。また精子提供のみならず、「精子取引」もあり、同じように提供・利用が急増している。 それはさておき、本書は精子提供を行い、生まれた少女が身寄りをなくしてしまい、提供者の家族へと行き、後見人として […]

村の日本近代史

よく教科書などで取り上げられる「日本史」は中央はもちろんのこと、主要都市における出来事など多い。しかし都市や中心地から離れた「村」にもまた「歴史」が存在する。では村はどのような歴史を辿っていったのか、本書は近代から現代にかけてを取り上げている。 第1章「村の近代化構想―織豊政権期」 元々「村」は単なる人の集まりであった。その人の集まりによって伝承が生まれることもあった。しかし秀吉の天下統一に伴い、 […]

蕎麦、食べていけ!

著者の江上剛と言えば第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、日本振興銀行と銀行畑を歩み、その経験から金融関係、さらには経済関係、サラリーマン関係の小説を多数出している。そう考えると、本書の小説は異色中の異色と言える。 本書の舞台は高校生からの町おこしである。しかし実際に観てみると金融や経済の要素が散りばめられており、題材が異なれど、著者自身が培ってきた経験が活かされており、金融機関の役割、そして最近でも話 […]

東條英機 「独裁者」を演じた男

第二次世界大戦における枢軸国の先頭指導者というと、イタリアではベニート・ムッソリーニ、ドイツではアドルフ・ヒトラーといる。しかし日本ではと言うと、「軍部」と言うだけあり、明確な指導者は年々と変わってきており、明確ではない。しかしたった一人を上げるとなると、本書で紹介する東条英機が挙げられる。本書は東条英機を思想の偏りもなく、様々な日記や史料に基づいてありのままの生涯を紐解いている。 なお元々は東「 […]