「医学部」と言うと、国公立の場合は難易度が高い、私学の場合は学費が高いといった印象が強い。とりわけ国公立の医学部は、花形の学部であり、人気は今もなお根強い。もっとも受験の中でも最大のハードルとしてある印象が強く、なおかつ医学部出身であることのブランドだけではなく、医者であることにより、収入が高く、安定するといった印象もある。
しかしながらここ最近の医学部は崩壊の一途を辿っている。医学部受験と行った教育面もあるのだが、それ以前に医学部そのものが歪んでいるのだという。本書はその背景について取り上げている。
第1章「東京大学医学部の凋落」
秀才・英才が集まるところとして東京大学医学部(受験では理科Ⅲ類)がある。受験では最難関の所であり、かつ教育のメンでも強みを見出していたところが、ここ最近凋落傾向にある。教授輩出もあれば、第一人者、さらには能力面での教育が落ちてきているといった指摘がある。
第2章「「医局」の弱体化」
少し違和感のあるタイトルのように見えるのだが、実は医学部内では、教授と准教授以下の役職などでのピラミッド型の組織になっている状況にある。そのような組織は東大内では「医局」と揶揄した。そのことから本章のタイトルである「医局」が出てきた。しかしその「医局」と呼ばれるほどの組織も、内部での腐敗が進んだことにより弱体化している事を取り上げている。
第3章「医学部ヒエラルキーの崩壊」
今もなお残っているものとして「学歴ヒエラルキー」がある。明文化はされておらず、なおかつ平等化や実力化が進んでいる中でなくなっているのではという話もあるのだが、悲しきかな今もなお存在する。医学部においても、大学によってのヒエラルキーがあったのだが、近年は実力主義化に伴い、それがだんだんと崩壊して行っている。
第4章「医学部とはどんなところか?」
私は文系のため、医学物とはどのような学部で、どのような状況にあるのかは本などのメディアでしか知らない。そもそも医学部は医師を誕生するための学部である。いわゆる「職業訓練校」のような部分がある。他の学部とは違い、学士としての学位を受けるために、多くは6年間という長い学生生活を送る必要がある。国家試験合格のための試験勉強もそうだが、他にも医師としての基礎的な学力や技術を身につけるための実習や講義、テストとハードな日々であるという。
第5章「ゆがんだ医学部受験ブーム」
受験勉強の中でも医学部への受験が後を絶たない。特に国公立大の医学部は学力偏差値が高く、ハードルが高い。そうであるが故に、ハードルを越えるべく医学部受験を志す人も少なくない。しかしその影響からか医師が飽和状態にないり、国家試験を合格しても、なかなか医者になれない、医者になっても稼げないといった現状もある。これはロースクールができはじめた後の法曹界でもかつて同じような事があった。
第6章「医者に向く人、向かない人」
医者は技術や教養を身につけるばかりでは成り立たない。人と密接に関わっていくことからコミュニケーション能力はどうしても必要にある。しかし医学部で学ぶ方々の多くはそれに対しての知識・考え方が欠如していることを本章にて著者は指摘している。
医学部は医者を目指すための学部であることは紛れもない事実である。しかし医学部を巡っての話になってくると受験にしても、医療にしても看過できないものがあり、本書で取り上げられた実態が露見したことにより、どのような変化があるのかは定かではないのだが、多かれ少なかれ影響が出ると思われる。
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