本書は「無戸籍」の子どもの姿を取り上げている。無戸籍に「無戸籍の日本人」「日本の無戸籍者」などの本を取り上げたのだが、ようやくドキュメントやニュースなどで取り上げられ、日本でもやっと国会で取り上げ始めたところである。
無戸籍であることの原因は様々な要因があるのだが、かつては繊細によって無戸籍にあること、そして本書の物語で取り上げているように、家庭の事情(DVなど)により、戸籍が得られなかったケースも存在する。
無戸籍の方々は生活面での「不便」もある。銀行口座や保険証、選挙権を得ることができず、さらには生活に必要な携帯電話に加入もできず、義務教育も含めた十分な教育を受けることができない側面もある。
本書で取り上げる物語はそれだけでない。親の愛を十分に受けることができず、未来が全く見えなくなってしまい、親からもらった自分の名前も嫌がり、自ら空虚であることを意味した名前を名乗った。その少女が東日本大震災の傷跡を残し、なおかつ被災した方々との出会いによって居場所を見つけ、心境も変化していく物語である。本書には家族の大切さ、支えてくれる方々の大切さと呼ばれる「陽」の面と、無戸籍問題と東日本大震災の傷跡を描く「陰」の面がバランス良く織り交ぜており、興味深く物語を読むことができる。
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