現在は多くの国家で「民主主義」を採用している。民主主義以外で言うと、社会主義や共産主義、あるいは独裁主義など多岐にわたるが、大多数は議会などをつくって「議会制民主主義」とする国である。
そもそも「民主主義」の歴史を紐解いてみると、古代ギリシアではアテナイ(現在あるアテネの古名)を中心として、国民が直接政治に参加する「直接民主主義」だった。その後は王政が中心となり、復活したのがアメリカ独立革命やフランス革命に入ってからのことである。
もっとも「民主主義」は現代において、多くの論者が考察を行ってきたが、主張の変化から民主主義のあり方はどうなっていくのかを論じているのが本書である。
第1章「指導者と民主主義」
「民主主義」とは言えど、その議論を進めていく中での「リーダー」が必要である。議会の議長である。しかしその議論を行う中で、国家としての「指導者」も必要である。アメリカなどでは大統領、日本においては内閣総理大臣である。
本章ではその「指導者」としてのあり方をマックス・ヴェーバーやカール・シュミット、ハンス・ケルビンといった人物たちが指導者と民主主義のあり方を論じている。
第2章「競争と多元主義」
「競争」と言うと、他国との競争はもちろんのこと、議会の中では派閥争い、あるいは政党争いなどの競争もある。一方で「多元主義」とは、「多元論」として表しており、
1.世界が唯一の原理から成り立つと考える一元論に対して,相互に独立な二つ以上の根本的な原理や要素によって世界をとらえる立場。
2.ある対象領域を説明する複数の異なる理論が共存することを認める考え方。「大辞林第四版」より
とある。この多元論の大本に、政治的な意志決定と施行における「古典的多元主義」なるものがある。
第3章「参加民主主義」
国民が政治に参加することはいくつかある。一つは国政や自治体の議会などでの「選挙」の投票、もう一つは自治体によるのだが「パブリックコメントの投稿」などが挙げられる。議員を選ぶ間接的な民主主義でありながらも、直接的に議論に関わる機会がある。
参加民主主義には海外ではどのような事例があり、課題として何があるのか。またルソーをはじめとした論者はどのような定義を表したのか、そのことについて取り上げている。
第4章「熟議と闘技」
議会の議論の中には、議論に議論を重ねる「熟議」のものもあれば、議論を激しく戦わせる「闘技」なるものも存在する。熟議と闘技の違いとそれぞれの民主主義モデルのあり方を論じている。
第5章「現代思想のなかの民主主義」
民主主義のあり方は時代と共に変化している。しかしその変化のあり方を現代思想を紐解いた哲学者らが批判を行う事もいた。代表格としてはジャック・デリダやジャック・ランシエールらがいる。
民主主義は変化しているが、革命以降の民主主義はどのように論じられたのかと考えると、ウェーバーやルソー、さらにはデリダなどもおり、一つにまとめて取り上げるだけでも難しい。その難しい変遷を1冊にまとめたのが本書と言える。
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