「官僚」と言うとかつては槍玉に挙げられる代表格としてあったが、現在は日本の根幹を支える部分、もといブラック企業の代表格というイメージもある。
「官僚」というと明治時代に今のような「議会」などの政府が作られたときから生まれたのかと思いきや、実は古代から天皇に使えていた方々が「官僚」と呼ばれていた。とはいえ官僚の中には貴族などの上級官僚もあれば、その下の下級官僚も存在した。中でも下級官僚は朝廷や天皇に対して忠実とは言えなかった所があった。本書は下級官僚の実態を明かしながら古代の官僚の存在を紐解いている。
第1章「律令官人とは何か―前史とその世界」
本書における官僚は天武天皇の時代以降を指している。天武天皇の在位期間は683~686年であるため飛鳥時代にまで遡る。その時の官僚は「律令官」と呼ばれており、その中にも身分があり、律令官ならではの特権もあった。
第2章「儀式を無断欠席する官人」
律令官の中に階級があったのだが、中でも下級の律令官、いわゆる官人の中には天皇の儀式を無断で欠席する人もいた。もっとも国会議員でも委員会に欠席して譴責されたり、処分されたりする方もニュースであったが、官人が無断で儀式に欠席してもお咎めなしだった。もしかしたら議員などの処分が甘くなる傾向もまたこの風潮が生きていたのかも知れない。
第3章「職務を放棄する官人」
現代であれば懲戒免職、寛大であっても諭旨免職か減給、出勤停止の処分が下るはずの行為であってもお咎めなし、あるいは処分が下ってもあまりにも寛大すぎるようなことも当時の官人の世界にはあった。使者派遣の事態、政務の遅刻・欠席、職務放棄と、本当に国を支える人々かと目を疑いたくなってしまう。
第4章「古来勤勉ではなかった官人たち」
その背景として元々官人たちは家の身分などによってなることができ、なおかつ勤勉ではなかった。時間にルーズにもなり、学ぼうともせず、不正も働くなど放蕩三昧と言う言葉が適当かも知れない。
第5章「官人たちを守る人事官庁」
それが罷り通っていたのが人事官庁である。今で言う所の人事院である。人事官庁も怠慢を行う事もあったのだが、不当な制裁から守るなどの権力を持っていたことから周囲の批判に反してお咎めなしになることも多かった。
断っておくのだが、今も昔も…と言う言葉は少し語弊があった。というのは本書で取り上げているのはあくまで飛鳥時代以降のこと、豪族や貴族などの身分社会が色濃く有、官僚も、その貴族などの高い階級から選ばれていた時代である。現在の公務員試験の合格でなることのできる官僚とは異なる。ただこの時代でも官僚がおり、どのような状況だったのか、と言うことを痛快に知ることができる一冊であることは間違いない。
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