本書は「古典籍」と呼ばれるものを紹介する一冊である。古典籍とは、
日本の古典籍は,慶應4年(1868年)以前に日本で出版・書写された書籍で,内容・形態がともに優れ価値が高い書物のこと「コトバンク」より抜粋
とある。つまりは江戸時代以前に残っていた活字・印刷物を表している。よく美術館・博物館などで展示している鳥獣戯画をはじめとした巻物もまた古典籍のひとつである。本書は歴史学的にも価値の高い「史料」といえる古典籍とは何かを見ていく。
第一章「古典籍の世界へ」
古典籍を探すだけでも一苦労かも知れないのだが、実を言うと古書店などで扱っている。もっとも業界としても「古書業界」と呼ばれており、著者自身も理工学の大学から古書業界に飛び込んだ経緯がある。
第二章「海外は日本古典籍の宝庫」
この古典籍は日本のみならず海外の古典も定義しているが、日本の古典籍は国内外に存在する。その多くは海外にある。あるものは首都の主要な駅で発見されることもあれば、しもそも古典籍自体が日本と海外の交流のために残されたもので、海外に保管されているものもある。
第三章「最古の史料発見」
以前書評にて「奇妙な瓦版の世界 江戸のスクープ大集合」の本の際に、瓦版として最古のものは1681~1684年と書いたのだが、それ以前のものもあったという。それは「大坂冬の陣」であり、1615年起こった戦いが「図」で取り上げられたものを著者自ら発見したことを挙げている。他にも伊能忠敬が自ら測量を行い、描かれた日本地図なども取り上げている。
第四章「古典籍、古文書は歴史の窓」
もっとも「古典籍」は江戸時代以前に作られた書物や印刷物であるため、今も残っていること自体が珍しいものである。もちろん骨董品としての価値もあるのだが、歴史学的にも「一次史料」として扱われることが多く、歴史そのものを映し出しているとも言える。
第五章「江戸後期、外国人の史料」
古典籍は外国人に関連するものも多くある。本章ではシーボルトの手紙が海外のオークションにかけられていたが、著者自身が落札して入手した。しかも本章ではペリー来航に関して、第13代アメリカ大統領のミラード・フィルモアがペリーに日本へ来航するよう命令した親書も紹介している。
第六章「世界的に評価の高い日本の古典籍とその蒐集」
古典籍を蒐集するとなると、入手が難しいものもあれば、海外でようやく手に入れられるものもある。しかし蒐集していくと、断片的であれど歴史的な「事実」が見えてくる。
歴史を知ることは現在までの道のりを知ることにある。その道のりを知る中で歴史書を読み解くことも一つであるのだが、実際にあったものに触れることもまた一つであり、古典籍はその一つでもある。しかしながら古典籍を見ていくと、様々な「事実」を知ることができるため、その面白味に魅せられるのも本書を読んでいてよくわかる。
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