現在はJOC(日本オリンピック委員会)の会長である山下泰裕だが、現役時代は柔道選手として世界選手権3連覇(うち1回は2階級制覇)、84年ロサンゼルスオリンピック金メダルを獲得するなど柔道の絶対王者としての活躍をした。
その山下と同時かその後に活躍したのが本書で紹介する斉藤仁である。斉藤は山下が金メダルを獲得したロサンゼルスオリンピック、その4年後のソウルオリンピックで金メダルを連覇し、山下のライバルとしても活躍した。
引退後は国士舘大学柔道部の監督、さらには柔道の全日本代表監督も勤め上げるほどであり、現在国士舘大学柔道部の総監督である鈴木桂治や現在は格闘家として活躍する石井慧を育て上げ、日本代表としては現在柔道の全日本代表監督である井上康生とも関わりを持っていた。本書は「JOC会長」と言う肩書きではなく、「最高のライバル」として山下氏自ら編集に携わった。
第一章「剛毅木訥」
本章のタイトルの意味は、
心が強く、しっかりしていて飾り気のないさま」「goo辞書」より抜粋
と表している。もっとも典拠となる論語には、
剛毅木訥は仁に近し
とあるため、斉藤仁の「仁」と言う名前もここから取られているのではないかとも邪推してしまうほどである。
本章では冒頭でも述べた山下泰裕氏をはじめ、恩師の川野一成、ソウルオリンピックの監督であった上村春樹、国士舘大学時代からの教え子の鈴木桂治、そして井上康生といった方々の思い出が綴られている。
第二章「サーカスの熊」
斉藤がトレーニングの支えとなった方や実弟の思い出が綴られている。
第三章「三つ目の金メダル」
柔道では様々な活躍を遂げてきた斉藤仁だが、家庭ではどのような存在だったのか、妻、そして2人の子どもの立場から柔道家とは違う側面の「斉藤仁」を取り上げている。
まもなくオリンピックが開かれる。現在は新型コロナウイルスの感染拡大により、受け入れられないような状況とも言える。しかしオリンピックには多くのドラマが待っている。かつて現役として経験し、監督として、強化委員長として経験をしてきたオリンピックの舞台。教え子たちが、ライバルが、様々な立場で支えていく姿を斉藤氏は天国から見守っている。
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