少年犯罪に関するニュースが出てくると、議論になることが多いのが「少年法」である。もっとも「少年法」自体は戦後間もない昭和23年に「少年の保護更生」を目的として公布・施行した法律である。
少年犯罪に関しての議論が色々と出てくる中で「少年犯罪は増加している」「少年犯罪は凶悪化している」といった話もあるが、いずれも誤りで少年犯罪はむしろ減少傾向にある(「平成30年版 犯罪白書」より)。凶悪化と言った所も、現在アニメで放送されている「ひぐらしのなく頃に」の惨殺シーン顔負けの殺人事件も戦前に起こっていたという。
そう考えるとなぜ「少年法」はでき、なおかつどのようにして適用されていき、議論の的になったのか。そして海外でも同じような少年法はあるのかなどを取り上げているのが本書である。
第一章「少年法の基本的な概念・制度」
現在の少年法こそ昭和23年に公布・施行したが、戦前にも少年法があり(「旧少年法」と指すことが多い)、大正11年に制定され、大東亜戦争の終戦後に現在の少年法に代わった。
大きく分けると10歳までは触法をしても刑罰を受けず、11歳から13歳までは刑罰を受けない代わりに少年院送致になる。14歳になると刑事責任が問われるようになり、刑罰の度合いによって刑事裁判にかけられ、処分を受ける。
他にも報道の面では実名報道が禁止されているが、昨今のインターネット上の暴露から実質的に形骸化している。そのこともあってかは不明だが、2022年4月からの施行される改正では実名報道が解禁される。
第二章「少年の手続き・処分―刑事裁判とどう違うか」
少年法における審理手続きは、通常の刑事裁判とは異なるところがいくつかある。少年事件は基本「家庭裁判所」で審理を行う。その家庭裁判所において少年院送致を行うか、場合によっては通常の刑事裁判になるかどうかの判断を行う(いわゆる「逆送致」という)。
第三章「少年犯罪・非行の現状」
メディアではよく「少年犯罪事件は増加している」「少年犯罪事件は凶悪化している」という話を目にするが、実際は異なっている。本章では犯罪白書や統計年報などのデータをもとに、事件数の推移や傾向、さらには少年に対する処分のあり方を取り上げている。
第四章「少年法の生成と展開―諸外国の少年法の概況」
少年法は日本に限らず海外にも存在する。俗に「少年法制」を指しているのだが、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンなどをもとにして法律体系から適用方法などを取り上げている。
第五章「日本の少年法制の生成と展開―その特徴」
もっとも少年法は昭和23年に公布・施行されて以来、ずっと変わっていないかというと、幾度か改正しており、なおかつ今日でも改正の議論を行っている。もちろん少年法改正のきっかけは少年犯罪がきっかけになることがほとんどなのだが、どのようなきっかけがあったのか、そして第一章の中でも挙げた旧少年法のことにも言及を行っている。
少年犯罪というと、メディアでもけっこう取り上げており、その中でも議論の的になる。それは少年法は必要かどうか、さらに少年犯罪の厳格化といったものがある。議論の多い少年犯罪と少年法。本当に必要なのかどうか、そしてどう改正すべきか、時代と共に変わっていく中で絶えず議論が続けられる。
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