「赤」という漢字は、使いようによっては「紅」にも、「緋」にも、「朱」にもなる。なぜ本書はタイトルで「緋」を使ったのか、物語の仲にあるように見える。
本書はと言うと明治時代の話であり、とある山村集落において起こった事件を取り上げている。その山村で流れる川には動物どころか人間の死体が血と共に流れるところから物語が始まる。もっともこういった話を見ると、狂気の沙汰の部分があり、都会の世間と大きくかけ離れた事情が見え隠れする。もっとも集落も他の人を歓迎することを良しとしない風潮がある。良く言って内向き、悪く言うと排他的な要素が見え隠れする。
その集落で働き始める新人医師は、先輩医師どころか、集落の方々からも受け入れてくれず、苦悶とする毎日を送っていた。しかし事件に遭遇し、謎を解いていくうちに見えてきた集落の悲しい真実があった。本書を読んでいくと、集落の事情はもちろんのこと、読み終えるとやりきれない感情に陥ってしまう。
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