レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

「レンタル」と言うと、今では下火になっているがCDやDVDなどが多くあった。もちろん現在でも図書館における本の貸し借りも無償とはいえど「レンタル」の部類に入る。

しかし数年前あたりから「レンタルお姉さん」「レンタルおっさん」といったものもあり、最近ではマンガ・アニメにもなっているが「レンタル彼女(恋人代行サービス)」も出てきている。

さて本書の話に入るのだが、2018年6月から「レンタルなんもしない人」を初めて2019年2月までに行ってきたこと、さらにはあった出来事を余すところなく綴っている。

1.「最初の一週間の話」

6月3日に突如「レンタルなんもしない人」のスタートを宣言した。あまりにも唐突なスタートだったため、初日は0人だったが、徐々に口コミかどうかは不明だが、利用者が増え始めていった。何をするのか、と言うと本当の意味で「何もしない」と言う言葉通りかも知れない。しかしながら何もしていないところで役立つという所から徐々に利用され始めた。

2.「その後の、6月:もう一人の私になってほしい」

「なんもしない人」と言っても、エキストラや成り行きで付き合うと言ったこともあった。先導して行う事もなく、ただ依頼者の依頼どおりに動くというものであった。しかしそれがある意味助けやよりどころにもなっているのかもしれない。

3.「7月:ロッカーに行け」

時としてレンタルなんもしない人には突拍子もないような依頼もくる。「ロッカーに行け」と言うようにする依頼もあれば、ドタキャンの依頼などヴァリエーションも広がっていった。

4.「8月の話:外苑前これたりしますか(涙)」

レンタルなんもしない人は東京だけで行っているわけではなく、大阪、名古屋にも足を運ぶこともあった。時には外苑前にまで足を運ぶこともあった。

5.「9月:「友人の見送り」をレンタルしたいです」

「何もしない」ことがコンセプトであるため、ただただ居る、見守る、見送る、さらには聞き役になるなど本当の意味で「何もしない」ながら、役立つような存在であることを知る。

6.「10月:「結婚式に出くわした」ぐらいの気持ちで、なんもしないで」

「結婚式を眺めに来てほしい」といった思わず「?」となるような依頼も淡々とこなす。「レンタルなんもしない人」は本当に不要なのかと考えていたのだが、実際にはそれを必要している方々がいるのかもしれない。ある意味「猫の手も借りたい」の「猫の手」を担っているかのように。

7.「11月:この依頼を断ってくれませんか」

時には面倒くさい人から面倒くさい依頼もある。「何か試されている…」と言うような感情になるのも無理もない。この11月では何件かそういった話があったという。

8.「12月:自分以外の生物がいる状態の自分を確認したい」

「レンタルなんもしない人」は口コミだけでなく、メディア出演もするようになり、だんだんと依頼が増えてくるようになった。もちろん内容によっては重いものから軽いもの二至るまで、様々である。

9.「1月:私入院してまして、お見舞いきてくれません?」

年明けになり、体調を崩したのだが、回復した。その後も絶え間なく依頼がやってきてはこなしていった。突拍子もない依頼もあれば、「なんもしない」と言うことが利点となった依頼までたくさんあった。

10.「2月の話(おまけ)」

おまけとして2月1日から8日まで取り上げられている。中には国会傍聴まで行っており、

一緒に国会傍聴してほしい」との依頼で参議院へ動向。“蓮舫”などの文字が書いてある座席表にキャッキャしたあと傍聴席へ。安倍首相や今井絵理子議員やアントニオ猪木議員を肉眼で見れて楽しかった。質問も答弁も原稿読み上げるだけなので真剣に聞いている人は少なく、みんな僕以上になんもしてなかった。p.233より。いずれも2019年2月当時

との感想。こうも言われている国会議員たちはどう思っているだろうか。

「なんもしない」からでこそ助けられることがあり、支えられることがある。人は何かやってもらう、もしくは何かしなければならない感情を持ってしまう。しかし「なんもしない」は役に立っていないようでいて、実はどこかで役立つ。「レンタルなんもしない人」の存在が、そのことを気づかせてくれる。