良いスウェーデン、悪いスウェーデン―ポスト真実の時代における国家ブランド戦争

2018年に「世界で評判の良い国」の第1位に選ばれた国、スウェーデン。その国では消費税が25%(種類によって税率が変わるため、全部が全部25%ではない)である一方で、福祉・教育などが充実した国として有名であるのだが、実際にはメディアではあまり報道されない「負」の側面も存在する。本書では知られざる「負」の側面と、真実を追っている。

第1章「クリスマスの灯、暴動、理想郷の崩壊」

北欧の国の一つであるスウェーデンではキリスト教(ルーテル教会)が主軸であるため、クリスマスも盛んに行われているかと思っていた。しかしながら、現状では公共の場ではクリスマスの灯りを禁止にしている。表向きな理由としては交通などの安全にまつわる問題を指摘しているのだが、実際には、イスラム教徒も流入しており、その面の問題も入っているのだという。

第2章「トランプ、アイゼンハワー、成功の価値」

数年前にヨーロッパにおいて難民や移民に関しての問題が表面化し、ほぼ毎日のようにメディアでも取り上げられるほどだった。もっともトランプ前大統領も移民問題を持っていると認識があったという。またスウェーデンにおける「成功」とはどのような価値を持ち、定義を持っているのか他国との比較を織り交ぜながら取り上げている。

第3章「難民とオルタナティブ・メディア」

前章でも少し取り上げたのだが、2015年に「難民危機」が起こった。欧州諸国では難民の受け入れに差が出るといった事があったのだが、スウェーデンでも例外ではなかった。このスウェーデンの難民の扱いについて、世界各国のメディアでは「無法地帯」「倒壊」「戦場」といった表現で悪い部分として取り上げられた。

第4章「突然変異」

スウェーデンでは規模にかかわらず、様々な事件が起こっている。婦女暴行に関しての事件もここ最近では横ばいでありながらも、件数は多く推移している指摘がある。また暴力犯罪についても取り上げられているのだが、そもそもスウェーデンの中でニュースとしてどのように取り上げられているかもまた「変異」が起こっているという。

第5章「ニュースの心理学と経済学」

難民問題を引き金に出てきた「悪いスウェーデン」。そもそもスウェーデンは悪い国なのかというと、疑問の余地はある。なぜニュースでそのような報道がなされていたのか、本章では心理学および経済学的な観点で紐解いている。

第6章「ポスト真実の世界」

「悪いスウェーデン」はメディアを通じて拡散され、スウェーデンの「負」の側面を促進された。しかし中にはここ最近話題となっている「フェイクニュース」なるものもあった。さらにそれを見きわめるべく「ファクトチェッカー」も出てきて、フェイクニュースが次々と暴かれるようになった。

第7章「スウェーデン式の逆襲」

国の評判はメディアを通して広がっていく。日本でも特に昨今の東京オリンピックの現状について良い面・悪い面双方の側面共広がりを見せている。もっともスウェーデンについても「悪いスウェーデン」を払拭するための動きを見せており、どのように行われているのかを取り上げている。

「負」の側面は事実であるところもあるが、中にはフェイクニュースに踊らされてしまい、国家的なイメージをつけられてしまった側面もある。そもそもそういった側面をつけるところはメディアであり、本書はスウェーデンの話であったのだが、日本でも例外なくフェイクニュースに踊らされてしまっている側面も少なくない(意識している・していないにかかわらず)。「踊らされる」ことの危うさを知ることのできる格好の一冊とも言えた。