国内外の地図には色々な地名や街などがある。中にはかなり特徴的なものまであり、愉しませてくれる。
しかしその一方で、地図から地名が消される、あるいは変えられるといったものがあるのだが、本書では今から10年前に起こった東日本大震災、そして福島第一原子力発電所事故によって、消されそうな街があると指摘している。著者自身は元々北海タイムスや北海道新聞、そして現在は朝日新聞社の記者として活躍し、特に東日本大震災の取材を通して見てきた「東日本大震災」と「原発事故」の現実を取り上げている。
第1章「声を上げられない東電現地採用者」
福島第一原子力発電所事故により、槍玉に挙げられたのが東京電力だった。しかしその影には日本を代表する電力会社で働くことを夢見て福島で採用を受けた人々もいたのだが、槍玉に挙げられた直後はどのような心境だったのか、その姿を明かしている。
第2章「なぜ捨てるのか、除染の欺瞞」
原発事故が起こった後に除染が活発化したのだが、中には除染自体を手抜きに行った実態があった。公に出されていたことと、現状とが異なっており、その現実を暴いているのが本章である。
第3章「帰還政策は国防のため」
原発事故による長い避難指示があったのだが、それが解除され、ようやく帰還できる民も出てきたのだが、その帰還「政策」としてであった。そもそもその帰還を行うための説明会に参加して、どのような印象だったのか、そして原子力と「核」との存在はどのようなものなのかを取り上げているのが本章である。
第4章「官僚たちの告白」
原発事故はメディアでも取り上げられた限りではかなり迷走したのだが、その迷走の裏には明かされない情報も数多くあった。本章ではある官僚の告発をもとにしての実態を取り上げている。しかしなぜ官僚の告発メールをもらったのかの経緯は明らかになっていない。
第5章「「原発いじめ」の真相」
「原発いじめ」は今もなお起こっている。もっとも原発事故によって避難を余儀なくされたが、避難先で苛烈ないじめに遭ったというニュースが連日のように取り上げられたこともある。本章では現在も続いているいじめの真相を取り上げている。
第6章「捨てられた避難者たち」
今もなお避難を続けている方もいるが、特に声を上げようにも上げられないような方々も多くいるという。その実態を明かしているのが本章である。
「震災」は今もなお続いていることは言うまでもない。しかし「続いている」中で多くのメディアから忘れ去られたものはいくつも存在するのかも知れない。それを考えると著者が取り上げたものは氷山の一角なのかも知れない。
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