道化むさぼる揚羽の夢の

歌にしても、物語にしても、翼や羽を持って自由に飛び立ちたいという思いを持ってしまうような作品が多くある。窮屈になる世の中で「自由になりたい」と考えている方々も多くいることも背景としてあるのかもしれない。

本書はある意味日常のように見えて、非日常である、いわゆる「ディストピア」の要素がふんだんに盛り込まれている小説である。

そもそも本書の舞台は典型的かどうかは難しいのだが「ブラック企業」と言っても差し支えないほどのブラックさであった。そのブラックに耐えかね自由になるため、生きのびるためだったのだが、なぜか揚羽の蛹に捕まってしまう。しかし捕まったことは決して悪いことではなく、ある種の「自由」を手に入れるための戦いだった。不条理の中で偶然ではあったものの、戦う術を得ることができた姿がここにあった。