原子力の精神史 ――〈核〉と日本の現在地

今から10年前に起こった東日本大震災、そして福島第一原子力発電所事故から原発廃止に関しての議論が活発化したのだが、それ以前にも少なからずある。またそれとは別に「核武装」に関しての議論もあり、これは今もなお議論が続いている状況にある。

本書はその原発の議論の他にある「核武装」の議論は現在どこにあるのか、その現在地を探っている。

第1章「核時代を批判的に考察する六つの論点」

日本の周囲の国で言うと北朝鮮やロシア、さらには中国と言った核保有国に囲まれている。他にもインドやアメリカなども核保有国である。現在では核開発のほとんどは停止・凍結しているのだが、いくつかの国では核開発と止めずに進めている所もある。そもそも「核」の時代をいかにして考察を行っていけば良いのかその論点を6つに分けて紹介している。

第2章「被爆国が原発大国になるまで」

原子爆弾に被弾された国が日本である。広島・長崎に被ばくされ、多くの死者・被曝者を出した。また戦後にはまたビキニ環礁の水爆実験の被害を受けたこと(第五福竜丸被爆事件)もある。その一方で、原発の開発にも着手し、日本の至る所で原発が作られ、稼働していった。また先の第五福竜丸被爆事件をきっかけに反原発運動・反核運動も動きを見せるようになったが、それを促進したきっかけは他にもアメリカのスリーマイル島原子力発電所事故や旧ソ連のチェルノブイリ、そして日本の福島第一原子力発電所事故などがある。

第3章「日本と核の現在地――3・11以後」

福島第一原子力発電所事故が起こったときの与党は当時の民主党であった。民主党は当初は原発推進だったのだが、原発事故を機に廃止に転向した。もっとも脱原発に向けた動きは自民党に政権が戻ってからもあるのだが、その足取りは重い。

また原発事故をきっかけとした「差別」「風評被害」も少なからずあるが、その現状についても取り上げている。

「核」に関しての議論は今もなおあるのだが、新型コロナウイルスが中心となっている世論では、その陰に隠れているような様相である。しかしながら国、さらには国防に関わる議論の中で避けて通れないものであるのだが、アフターコロナになってその議論が進むのかどうかはわからないと言うほかない。