本書は幕末の京を舞台にしている作品である。もっとも幕末の京というと、尊皇攘夷や倒幕を目指すべく、壬生浪士組、後の新撰組が結成した場所でもあり、政争の絶えない場所としても知られていた。さらには1867年には大政奉還が行われた場所(京都・二条城二の丸御殿)としても知られており、幕末の激動が色濃く表れていた。
その剣呑たる場所の中でほっとするような物語が本書である。清水寺に近い四条と呼ばれる場所にて、小鍋茶屋が舞台である。その茶屋で切り盛りしている女性である。またこの茶屋では幕末で活躍する志士たちの憩いの場である。
志士たちが通うとなるとどうしても幕末であるだけに、ピリピリとした空気になるイメージがあるが、本書はそういう所がなく、むしろ様々な鍋を舌鼓しながら、和やかであり、なおかつほっこりするような話がある。そう言う意味では、オアシスのような場所がここにあると言える。
posted with ヨメレバ
柏井 壽 講談社 2020年11月18日頃
コメント