交通事故は本当に減っているのか?―「20年間で半減した」成果の真相

交通事故は減少傾向にあるといったニュースを目にするようになった。警察庁の発表資料を見ると、確かに2004年をピークに減少傾向にあることはわかるのだが(Car Watch「2020年の交通事故死者数は2839人、統計開始以来最小を更新し初めて3000人を下まわる」より)、本書のサブタイトルにある所は果たして本当なのだろうか、という疑問を著者は持っている。

しかし数字から見てみると、先述のリンクを見て見ると、2000年と2020年で比較すると、交通事故発生件数は2000年で931,950件、2020年で309,000件と、半分はおろか3分の1になっている。その要因とこれからの問題点はどこに当たるのかを本書にて取り上げている。

第1章「交通事故発生状況の実態」

全国の交通事故発生件数は警察庁の「交通事故統計年報」に記されており、本書でもその実態におけるデータを採用している。しかし「警察庁」としての発表にあるため、そこでカウントしていない交通事故も存在しており、本章では「隠れ人身事故」といった表現を用いている。「隠れ」はどのようにして起こり、どれほどの件数が上げられているのかを取り上げている。

第2章「自賠責保険制度の現状と課題」

車を持ち、運転している人であれば、必ず入らなければならないものの一つとして「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」がある。制度自体は1955年から運用がスタートしている。もっともこの保険は冒頭にもあるように「加入しなければならない」といった必須事項となっており、加入せずに運転すると「無保険運行」となり懲役・罰金刑が科せられる。この保険の運用はどのようなものであるのかを現状と審議会の議事録をもとにして「課題」もあぶり出している。

第3章「交通安全対策の実施状況」

毎年春や秋などの季節に応じて「交通安全運動」が行われている。また国としても法律にて「交通安全対策基本法」が制定されており、国単位での対策も実施している。この法律は1971年に制定されたが、このときは車社会へと変わっていき、交通事故が増え始めた所から法律の制定が必要であると認識されて、作られた。またこの法律をもとに「基本計画」の策定を行い、数年ごとにフィードバックを繰り返している。その足跡を取り上げている。

第4章「交通安全対策の問題点」

では、交通安全対策はキチンと実施されているかというと、著者自身は疑問に残っているという。中でも隠れ人身事故はもちろんのこと、統計の数字と実態とは乖離しているのではないかとの指摘もある。ここ最近では高齢者の事故もあり、なかにはメディアで取り上げられることも少なくない。

日本において、交通事故はほぼ毎日のように起こっている現状にある。数字としては減少傾向にあるのだが、車離れが起こっていることも否めず、特に昨年からは新型コロナウイルスの感染拡大により、車での移動も減少していることも挙げられる。単純な事故件数だけで見れば確かに減少しているのだが、その背景に車の保有台数はどうなのか、また事故の内容や年齢層はどうなっているのかという「変化」も大切である。基本計画の策定・フィードバックでは行っているのかも知れないのだが、それだけでは足りないことを著者は警鐘を鳴らしている。