コロナ後のエアライン

昨年の初め頃から続いているコロナ禍は様々な業界において暗い影を落としている。メディアでは飲食店に目が行きがちであるのだが、他にも旅行業界は大ダメージを喫してしまい、さらには本書で紹介する航空業界でも、国内外問わずに苦しい状況が続いている。またアフターコロナと呼ばれる時代になった時に、航空業界はどのような変化となっていくのだろうか、本書ではそのことについて取り上げている。

第1章「ANAとJALの危機」

航空会社二大大手となるANAとJAL。かつての状況とは異なり、コロナ禍で両方とも苦境に立たされている。もっとも国内外問わずに、飛行機利用が急激に落ちてしまい、昨年の国内線でも1回目の緊急事態宣言が出たことにより、とりわけGW中の利用者数が昨年の同時期に比べて90%以上減と前代未聞の下落幅となったという。

ただ1回目の緊急事態宣言解除後は回復傾向が見られたのだが、第三波になると、再び落ち始め、先行きすら見通せなくなった。

第2章「ANA・JALの雇用とマネジメントの苦闘」

ANAもJALにしても、かなりの数の雇用を野放しにしておくわけにはいかない。もちろんリストラも一つの策かもしれないが、このような状況の中で行ってしまうと路頭に迷ってしまうことも必至である。そのため両社ともリストラは行わず、給与カットを行いつつ、外部出向という形でつないでいた。出向先は様々でコールセンターや家電量販店もあれば、ニュースにもなったのだが神社の巫女もあった。

第3章「大手以上に過酷な試練となったLCCと中堅航空会社」

大手であれば外部出向といったことなどを行い、雇用をつなげることはできたのだが、LCCや中堅会社はそうにはいかなかった。むしろそれができないほど苦しい試練に巻き込まれるほどだった。中には経営破綻に追い込まれる所もあった。

第4章「コロナ禍で生まれた新たな発想」

飛行機を運航することができない中で新しい発想も生まれるようになった。航空機内外で販売しているものをネット通販で販売することもあれば、飛行機を飛ばさずに「利用」する所もいくつかあり、新しいやり方、思いも寄らない考え方で新しい顧客を生み出すといった試みもあった。

第5章「閑古鳥が鳴く国内空港」

国内空港はどうかというと、もちろん観光客・飛行機の利用客が伸び悩んでいる中で、苦しい状態が続いていた。もちろん売上的にも悪い状況かも知れないのだが、「ピンチはチャンス」と言う言葉がある。実は昨年大きな話題となったドラマ「半沢直樹」がこのとき航空会社を舞台にしたシリーズを放映したが、撮影の舞台として空港をふんだんに利用できた所もあり、ドラマや映画のロケとして使われるという意味で使えると言う側面もあった。

第6章「海外の航空会社で広がるリストラ・経営破綻」

海外の航空会社も例外なく、コロナ禍に苛まれていた。中にはリストラや経営破綻となってしまう会社も続出しており、なおかつアフターコロナとなると「オンライン旅行」と呼ばれるものも急増し、さらに増えることが見込まれている。

航空会社もコロナ禍で苦しい状況に見舞われているのだが、本書を見てみると「ピンチはチャンス」として新しい試みを行っている所も少なくなかった。苦しい中で生まれてきた新しい考えや試み、さらには航空会社としての技術やサービスの転用、さらには閑古鳥の鳴く場所ではロケ地の利用など、コロナ禍によって決して苦しいといったわけではなく、航空業界としては考えつかなかった新たな可能性が見出されている。苦しさと新しさ、その両方を見出せる一冊である。