中国の中で最も有名な都市となるといくつかあるのだが、中でも香港は特別行政区として指定され、なおかつ1997年までは中国大陸でありながらイギリス統治下にあったことから中国とは異なる変化を遂げてきた。そのため中国のようで中国ではないような特色があり、一国二制度もあってそれが認められた状況だった。
しかしその状況も「2019年逃亡犯条例改正案」の法案提出と「香港国家安全維持法」の成立によって大きく変わった。特に前者に対しては香港の反発が強く、民主化デモにまで発展するほどであった。本書はこの民主化デモの記録を取り上げている。
第1章「たまるマグマ」
2019年の3月あたりからデモが行われていた。それは何かというと民主化の活動家による運動だった。だった。規模としても12000人ほどで、多いように見えるが、次章以降の大規模化に比べると少ない方である。またこの運動の発端は2018年に台湾において香港在住者が殺人事件を起こし、身柄の引き渡しの条約・協定がなかったことから発端として「逃亡犯条例改正案」が提出されるきっかけとなった。
第2章「抗議のうねり」
そしてデモの規模はだんだんと大きくなり、なおかつ政府内でも改正案を巡って親中派・民主派の対立が激しくなったことから、デモ参加者の中には民主派の議員も呼びかけるなどもあったことも起因している。
特に2019年6月9日・12日・16日と大規模なデモが行われ、発表箇所によって大きく異なるが数十万~200万人規模にまでなるほどだった。
第3章「怒りと憎悪」
この抗議デモは警官とのもみ合いになることもあり、けが人・逮捕者も出た。その前後にもいくつか集会や、先述ほどではない規模のデモもあったのだが、逃亡犯条例改正案だけでなく、警官の鎮圧に対する抗議も含まれていた。
第4章「緊迫と混迷、極限に」
緊迫した対立はなおも続き7月には香港立法会の占拠を行い、8月にはストライキを実施することでさらに緊迫さが増すようになった。しかもデモ運動も頻繁に行われ、警察が催涙ガスやビーンバッグ弾を利用すると言った武力行使での鎮圧を行ったこともあれば、さらには警官がデモの参加者を警棒で殴打し、殺害する事件にまで発展した。
改正案は元々強硬に変えないという主張だったのだが、廃案に舵を切る声明を行ったが実際には行っておらず、そのことで対立は深まることとなった。
第5章「深まる分断と対立」
デモ隊と政府との対立は深まっていく中で11月24日に香港区議会議員選挙が行われた。香港が中国に返還後、過去最高の投票率となり、なおかつ民主派の圧勝となった。香港の民主化デモの中での要求の中で「民主化」はここで達成することができた。
あとはさらなる民主化に向けてデモ活動が続いたのだが、習近平はそれを許さなかった。
第6章「国家安全法の衝撃」
翌年になる2020年の5月に全国人民代表大会にて、「香港国家安全維持法(中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法)」が制定されるようになった。香港デモに関して習近平は常々苛立ちを持っており、その我慢の限界に達したという見方がメディアでもあった。それ以前からも中国政府による介入が相次いでいたのだが、この法律の成立に対して、それに反対するデモも起こった。
第7章「弾圧の嵐」
しかしこの法律は一国二制度の事実上崩壊のみならず、デモや集会などを強く制限する事項が盛り込まれており、徹底した弾圧の嵐となった。抗議の逮捕のみならず、民主派議員の出馬禁止など、民主化を止めることに対して徹底的な弾圧をかけていった。
第8章「香港はどこへ」
香港はこの香港国家安全維持法により、徹底した弾圧や民主化運動の指導者の逮捕も相次いでいる。民主化への道のりはかなり遠くなってしまったが、今もなお抗議を始め民主化運動は続いている状況にあり、一方で弾圧の動きも強まっている現状もある。
中国は実質的に共産党一党独裁国家である。その例外として香港があったのだが、その香港も実質的に二制度から外され、「中国の一部」に変わって言ってしまうのだろうか、あるいは国内外の協力もあって、民主化へと進むのか、対立はまだ終わっていない。
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