別府温泉と言えば、日本有数の温泉郷であり、「温泉都市」としての異名を持つほどのおんせんとして有名である。源泉数や湧出量とも日本一とも言われている。
その別府温泉を全国に広めた人物として油屋熊八(あぶらや くまはち)がいる。その油屋こそ本書の物語の主人公である。
元々油屋は伊予国(現在の愛媛県)に生まれ、アメリカで放浪の旅に赴いた後に別府へと渡った。その別府において亀の井旅館(現在の別府亀の井ホテル)を創業し、そして別府温泉を全国に広めるために私財を投げ売り広報活動にも務めた。そこで、
「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」
というキャッチフレーズでもって全国に広めていったことはあまりにも有名な話である。本書はその油屋熊八の人生そのものを描いた小説である。また本書は油屋熊八の郷里である愛媛、さらには全国を広めるために根を下ろした大分の両方の新聞で連載していた。その連載時期も2020年5月~2021年5月にかけて。油屋熊八が1935年に没したため、没後85周年という節目だったこともあるのかもしれない。
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