ここ最近では新型コロナウイルスの感染拡大もあり、小売業界もまた苦境に立たされている部分がある。特にマスクが枯渇している時にはある種の「地獄絵図」になることもあったという報道まであった。
その小売業界も様々な側面で変わっているのだが、本書は中国における小売業界の変化を取り上げている。そこでは新型コロナウイルスが発生する以前から、ニューリテール(新しい小売)を目指して、様々な変化を及ぼしてきた。
第1章「ビジネス新時代を勝ち抜くニューリテールの本質」
小売は、よくスーパーやデパート、ショッピングセンターなどの販売する「場所」でモノを販売することが原則であった。しかしここ最近ではネットスーパーやネット通販なども出てきている。そう考えるとデジタルの融合を行う事かと思ったのだが、実はそうではなく、テナントの賃料と、集客コスト、さらには物流を含めた様々な「コスト改善」「効率化」と言った要素が挙げられる。
第2章「オンラインとオフラインを融合させるニューリテール」
オンラインにもオンライン特有の良さもある一方で、オフラインにもオンラインにはない「良さ」が存在する。その良さをいかにして融合させていくのかがこの「ニューリテール」を行っていくためには必要なことであるという。
第3章「売場効率の限界を突破するニューリテール」
とどのつまり「最小限のコストで最大限の利益」と言う言葉が似合うのかも知れない。しかしながらニューリテールはそれだけではない。売上を上げていく上での人の流れや売上に直結するための「成約(コンバージョン)」をオンライン・オフライン両方を駆使して効率を上げていくべきかにフォーカスを当てているため、効率の「限界突破」を測ることができる。
第4章「中間の不要なプロセスをカットして効率を上げるニューリテール」
日本でも、特にスーパーやコンビニなどで「プライベートブランド(PB)」が続々と生まれており、安価でありながら、利益を得ることができるものがある。それに似ているのかというと、似ても似つかないのが中国のニューリテールである。本章のタイトルにある卸売や仲介といった中間のプロセスカットはもちろんのこと、仲介は活かすのだが、その中にあるサービスを効率化することによって仲介業者にも利益を与えるというようなWin-Winの側面も持っている。
第5章「ニューリテールは今、この瞬間も進化している」
技術革新でも経済革新でも、日常茶飯事のごとく「進化」し続けている。その進化の歩は今もなお止まることなく、続いている。しかしその「進化」の課程の中で作っている中にある「思考」「思想」があるのだが、本章ではその進化の「思考」「思想」を明らかにしている。
以前「ルポ デジタルチャイナ体験記」において、中国のデジタル化が先鋭的であることを取り上げてきたため、本書の小売革命もそのようなイメージを持ってしまったのだが、確かにデジタルは駆使していることは間違いない。ところが「革命」の本質はデジタル化、ではなく「効率化」を鋭く行っているといったものであった。その「効率化」の聖域は日本ではあるものが、中国ではあってないように「聖域なき改革」を行ってきた事を事例で以て示している。
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