F1などモータースポーツを舞台に活躍しているホンダが、昨年11月に2021年シーズンを最後にF1から撤退することを発表した。その理由として本書で紹介する「カーボンニュートラル」の実現に注力したいとのことだった。実際にホンダは今年4月に三部敏宏が新社長となり、2050年という長期にわたるカーボンニュートラルへのロードマップを示したばかりである。
ホンダを始め自動車業界でもカーボンニュートラルへの動きを見せているのだが、そもそも「カーボンニュートラル」とは何か、そして昨今話題となっている地球温暖化にどのような影響を与えるのか、カーボンニュートラルに関しての入門書として取り上げているのが本書である。
第1章「「カーボンニュートラル」って、つまり何?」
「カーボンニュートラル」は端的に言うと、
地球の気温上昇を抑えるために、温室効果ガスの排出量をプラス・マイナス・ゼロにすると言うことを指す。p.18より
とある。特に地球温暖化の拡大もあってかどうかは不明だが、今年もまた台風をはじめ、梅雨前線の活発化に伴い水害が発生している。特に熱海では土石流により26人(2021年9月3日現在)の人命が奪われた。特に日本でフォーカスを当ててても毎年のように台風や前線をはじめとした水害が頻発しており、死者も出しているほどである。また農作物・漁獲量への影響も出てきており、経済的な側面でも悪影響を及ぼしている。
第2章「温室効果ガスをどう減らす?」
その要因としては二酸化炭素をはじめとした「温室効果ガスの排出量」が増えてきたことにある。さらに突き詰めていくと、人口の増大や工業化なども要因としてある。ではどのようにして減らすべきか、という課題になってくる。植林をはじめとした森林管理をはじめ、海洋植物などの管理、さらにはバイオエコノミーとして植物資源を原料としたものの製造といったものも挙げられる。
第3章「資本主義は環境にとって悪なのか?」
昨今では新型コロナウイルスが猛威を振るっているのだが、世界的に広がった当初では世界各地にてロックダウンなどの「外出禁止令」が出てきていた。もちろん一部の国・地域でも度々行われているのだが、皮肉なことに、この禁止令によって欧州では二酸化炭素の排出量が大幅減の試算がでているというニュースがあった。
そう考えると外出や旅行などの活動が二酸化炭素などの排出量に影響がでていることを考えると、こじつけかもしれないが、資本主義といった思想も環境にとって悪になるという推論が生まれる。しかし本当にそうなのだろうか。本章ではその疑問に対して経済学の観点から分析を行っている。
第4章「投資家と銀行が迫るカーボンニュートラル」
このカーボンニュートラルは資金面でも変動を起こすため、経済にも多少なりの影響を及ぼす。その影響が投資家や銀行にとっても、稼げるポイントにもなってくる。本章ではその投資家や銀行がなぜカーボンニュートラルに着目をしているのかを取り上げている。
第5章「カーボンニュートラル政策による各産業への影響」
カーボンニュートラルは様々な面で影響を及ぼすのだが、実はそれを決めるところとして「政治」も一つとしてある。それは政策的に「経済政策」の観点から計画・実行するといった側面である。その政策自体は各業界にとっても影響を及ぼしているが、本章では各業界にてどのような影響を及ぼすのかを示している。
第6章「カーボンニュートラルと地政学」
実はこのカーボンニュートラルは国際的な「競争」の中心にもなっている。かねてから環境問題において、「排出量削減」や「排出量取引」といった駆け引きもあったが、それが現在のカーボンニュートラルに引き継がれている。各地域・国ではどのような思惑を持っているのかを本章にて取り上げている。
カーボンニュートラルと言うと技術的なことかと思いきや、実は「概念」に他ならなかった。もっとも日本のみならず、世界的にも温室効果ガスの排出量削減をはじめとした環境政策を立てており、その政策と経済政策とを融合させるような試行錯誤を繰り返している。その側面を本書では「入門」として提示している。
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